名古屋の弁護士事務所 北村法律事務所

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コラム

人はなぜ騙されコントロールされてしまうのか

2012年06月05日 カテゴリー:民事

本屋へ行くのは楽しみだ。5月にはオリンパスもの3冊「解任」「サムライと愚か者暗闘オリンパス事件」「オリンパスの闇と闘い続けて」が並んで平積みされていた。 その後、本屋へ行くと、木嶋佳苗被告人に関する本が4、5冊と、紀藤正樹弁護士の「マインド・コントロール」が平積みされていた。それらの何冊かを買い、「マインド・コントロール」を読んでいたところに、オウム真理教の菊池直子逮捕というニュースが飛び込んできた。

オウム事件が報道されていた当時、「息子がオウムに入信して、戻ってこないが何とか連れ戻す方法がないでしょうか」という相談を受けた。1人は国立K大1年生で兄弟の中で一番頭が良く、素直な良い子だった(仮に、Kと呼ぶ)。父親は名前の知れた会社社長。もう1人はA大1年生(仮に、Aと呼ぶ)。父親はマスコミ勤務で資産家であった。
頭の良い資産家の息子を狙ったのかとさえ思ったのは、オウムが、入信した人に遺言を書かせているという説もあったからである。

麻原が逮捕された。サリンを使用した事件の頃、ロシアへ行かされていて重罪を免れたが、有印私文書偽造・同行使罪で上祐が逮捕された後、Kは上祐の養子になってしまったことを、両親は公安警察から知らされた。身柄拘束された上祐のメッセンジャー役を務めていたと思われる。
Kは、その後、逮捕され、逮捕勾留期限の23日後に処分保留のまま釈放され、名古屋の実家へ戻ってきた。両親は大喜びした。「うちの息子もようやく目が覚めました。K大にもう1回行くと言ってくれました。」と報告してきた。
しかし、数ヵ月後、Kは、「K市に行ってくる」と言って親からお金をもらって家を出たが、それっきり戻ってこなかった。後で、手紙がきて、「バイバイ」と書いてあったとのことである。そして、今だに戻っていない。

Aが、上九一色村に居ることを公安から聞いた両親は会いに行き、姿を見かけることができたが、話をすることはできなかった。彼は逮捕はされていない。2度ほど、祖母に会いたいという連絡があり、お金をせびっていったが、結局、戻っては来ていない。やはり、真面目でいい子であった。

紀藤弁護士の本に書いてあるとおり、逮捕された後、戻ってきたKにはカウンセリングができる人をつけるべきであったと思われるが、名古屋地区でオウム信者をカウンセリングして、自らの信じることが誤っていることを諭してくれるカウンセラーが見つからなかった。
統一教会の場合は、キリスト教の牧師さんでカウンセラーとして有効な力を持っている人が名古屋地区におられた。オウムはキリスト教でも仏教でもなく、麻原教であったため、連れ戻す有効な手段がなかなかなかったのである。
また、教団に戻った子どもに親側からコンタクトを取るのも不可能に近かった。

当時、オウム真理教と知らず、マンションの2室を個人名の人に賃貸したところ、オウム真理教の信者達が10数人入り込み、不気味だから退去させたいという大家の代理人にもなった。任意に退去してくれないので、明渡しの裁判をせざるを得なかった。勝訴判決を得て、執行官と鍵屋と共に現場へ行った。ドアを開けて中を覗くと、10人くらいの人がヘッドギアというものを頭につけて呪文のように「修行するぞ、修行するぞ」と言いながら体を動かしていた。責任者だという男性がきたので、執行官に話をしてもらい、明渡しの約束をとり付けることができ、何とか平穏に明渡してもらえたこともある。
菊池直子被疑者は17年間の逃亡生活に疲れ果てたように痩せていたが、たぶん、パシリとスポーツ広告塔に使われたのであろう。

それにしても、なぜ人はこうもやすやすと騙されたりマインドコントロールされたりするのだろうか。統一教会から二束三文の大理石の壷を高く買わされた女性や、入信して絵画やネクタイを売っていた若者、オウム真理教に身も心も捧げて殺人まで犯してしまった優秀な人達などだけではない。占い師の言うがままになってしまったと思われるオセロの中島さんだけではない。木嶋佳苗被告人に騙された男性達だけではない。どんなに強い人でも、病気になったり、心が弱った時に、ふと何かにすがりたいと思ってしまうのだろう。

NHKスペシャル「オウム真理教」で、麻原の巧みなマインドコントロール術の一部を説明していた。騙したりコントロールしようとする側の術を知り、かつ、それを見破り打ち勝てる力をどうしたら身につけることができるのだろうか。

AIJ問題

2012年04月03日 カテゴリー:民事

AIJが厚生年金基金から預かったお金を消失させていた事件は、年金制度そのものの変更を迫るほど大きな波紋を呼んでいる。
2012年4月3日、参院財政金融委員会でAIJ投資顧問の浅川和彦社長らの参考人質疑が行なわれた。 浅川社長は「運用に失敗した事実の責任はあるが、だましたという認識は一切ない」と繰り返した。 AIJに45億円を運用委託した栃木県建設業厚生年金基金の渡辺理事長は、「運用実績を改ざんし、契約通り運用していなかったのだから詐欺以外のなにものでもない。当初から騙されていた」と批判した。年金基金への営業を担当したITM証券の西村社長は、「浅川社長にだます意思があったかどうかはわからないが、外形上はだましたように見える。運用実績に関する監査報告書について疑わなかったといえば嘘になる」等と述べたという。(4月3日付日経夕刊、中日夕刊)

なぜ参考人招致なのか。手ぬるい。
詐欺罪で逮捕してほしいと思っている厚生年金基金は多いのではないだろうか。

被害金額は数十億円と規模は異なるが、AIJの社長の言い分は、詐欺で実刑となった大和証券の社員によく似ているなと感じた。
大和証券に19年勤めていたベテラン女性社員Yが、元々の顧客等に対し、「ペイオフは、証券会社には無関係だから銀行に預けるより証券会社に預ける方が安心ですよ。年に1回、特定の顧客にのみあっせんする非公開商品があり、必ず儲かりますから○○円でいいから預からせて下さい。2ヶ月で11%の利息をつけますから。」「大和証券の株が安く手に入ります。ソニーの株が社員用で安く手に入ります。」等と言って勧誘し、数百万とか1000万とかの単位で何十人もからお金を預かった。1億円近いお金を預けた人もいた。後の方にだまされた人は1円も返してもらっていなかった。
発覚したのは2002年夏。民事訴訟が終わったのは2010年だった。被害者のうち10名の方から依頼を受け、中村警察に詐欺罪で告訴しに行った。告訴人をしぼると、告訴状を受理してくれた。
刑事が、数ヶ月かけて膨大な資料をもとにお金の動きを図式化して調べたところ、バブルの時は、株式を買うなどして運用していたが、バブルが崩壊すると、顧客から新たに預かったお金を他の顧客に返還するものにまわし、自転車操業していたことが判明し、検察官は詐欺罪で起訴してくれた。

刑事法廷で、Yは「だまし取ったつもりはありません。」「うそをついてお金を預かりました。でも約束どおり、本当に最後まで返そうと思っておりました。」と供述した。
AIJの社長と同じだ。

判決は、一審が、初犯でも、実刑6年、二審で5年だった。

名古屋高裁刑事部は、次のような判示をしている。
「外務員としての成績を上げるため、会社からは禁止されていたのに、一定の利益を保証する利益保証の約束や、預かった金員を外務員が自由に運用する一任取引の約束をした上で、金員を預かって株取引を行なってきたところ、いわゆるバブル景気の崩壊に伴う株価の下落によって、顧客から預かった金員が大幅に減少したのに、顧客からは利益金等の払い戻しを請求されるという状況となった。そこで被告人は、これらの顧客に対する払戻金に充てるため、他の顧客から金をだまし取ることを企て、原判示のとおり、架空の金融商品の買付代金等と称して被害者らから金員をだまし取ったというものである。」
(2004年8月23日名古屋高裁刑事第1部判決)

民事事件で、大和証券は、「10%以上もの運用益があるはずがない。原告らは、Yが違法なことをしていたことを知っていたはずだ。悪意であるから大和証券に賠償義務はない。少なくとも原告らには重過失がある。」と主張し、原告らの方があたかもYの犯罪に加担したかのように主張した。
これは、被害にあった厚生年金基金に対しても向けられる主張だと思われる。
しかし、だました方が一番悪いのは明らかだ。Yの監督をきちんとしなかった大和証券が悪いのは明らかだと言いたい。

大和証券では、1991年、会社ぐるみで損失補填をしていた事実が発覚している。社員には重いノルマを課していた。1998年1月にも2000年9月にも同種事件が発覚していたが、顧客に特別の注意喚起をしていなかった。名古屋地裁は、和解を勧め、被害者の過失は認めざるを得なかったが、大和証券から相当の和解金が支払われた。

Yに対しては判決をもらった。Yは、賠償責任を免れようと、事故発覚直後、自己破産を申し立てたが、免責は当然のことながら許可されなかった。約5年間、刑務所で働いたお金のうち10万円を送ってきただけであった。

国から預かっている代行部分にまで赤字が食い込む「代行割れ」を起こしている基金も増え、その数は200基金を超えるといわれている。国からの代行部分を返上して年金基金を解散するには赤字を企業が補填しなければならず、年金倒産になりかねない。

では、国が管理している厚生年金は、どうなのだろうか。NHKをみていると、何兆円も減少しているとのこと。だいぶん前には社会保険庁が流用していたこともありましたよね。高利回りで運用するために、新興国への投資をしているところもあるという。為替リスクや政情リスクもある。

日本のバブル崩壊、リーマンショック、ギリシャなどの危機。もうハイリターンは望まないで、未来の計画を立てるしかないのではないか。(年金積立金を支払う人は減少せず、高い運用益が見込まれる)という誤った予測のもとにつくられた制度は根本的に変えざるを得ないだろう。しかし、そうすると、生活保護は増加すると思われる。

弁護士橋下徹氏、大阪ダブル選圧勝によせて

2011年11月28日 カテゴリー:民事

この原稿を書いているのは、2011年11月28日。昨日の大阪市長と大阪府知事のダブル選挙で橋下氏が圧勝したニュースが、一般紙のトップ記事であった。
橋下氏の圧勝は、予想されたことであった。週刊文春と週刊新潮の橋下氏タタキは、「父親の出自(でどころ・生まれ)は関係ない」という橋下氏の反論と大阪在住の方々の同情により逆効果となったと思われる。

「大阪都構想」というものは極めて漠然としており、大阪市と大阪府の垣根を取り払いさえすれば夢がひらけるということは、想像することができない。それよりも、大阪市の職員や教育委員会を敵とすることによって、敵味方をはっきりと作り出し、自分を応援してくれるよう働きかけるという橋下流の手法なのだろうかと思ってしまう。当選後の記者会見で、橋下氏は、職員の給与を見直す、幹部職員が政治に口を出す体質を変える、平松氏を応援した市職員は市役所を去ってほしい等と述べていた。今後、職員や学校の先生は大変なことであろう。    なお、公務員に対しては、地方公務員法に違反したり、欠格事由に該当する行為をしない限り、懲戒処分を行えない。このことは、弁護士である橋下氏は重々承知のはずだ。

名古屋市では、職員の給料は下げられたが、教育に関する条例までは作られていない。名古屋市の職員は、トップが変わればその時々の市長のやり方を習得し、我慢強く職務を行なっておられるように見え、市長と敵対する程の人はいないと聞いている。

「選択」と呼んでいるものは、自分自身や自分の置かれた環境を自分の力で変える能力のことであり、選択するためにはまず自分の力で変えられるという認識を持たなくてはならない。(『選択の科学』シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳)

選挙は、選挙民が候補者を選択するというものであるが、自分自身の力で変えるわけではなく、選択した候補者に変えてもらおうとするものであるところに、純粋の選択ではない、ねじれがあるわけだ。
橋下氏は、「橋下氏の力で大阪が変えられる」という希望を、選挙民に持たせる力が強かった。現職の平松氏が行ってきた市政では何も変わらないと思った人が、チェンジを望んだ。そういう人の心を、がっちり掴んだのであろう。民主党に風が吹いた選挙のときも、それまでの長い自民党政治を変えたいと思った人が、こぞって民主党に票を入れた。しかし、民主党に投票した人の中には、今の民主党政権に期待を裏切られたと思っている人も多いのではないだろうか。

弁護士が国会議員や地方公共団体の首長になっていることが多い。
ある議員の方からは、「弁護士をやっていて、法律の解釈だけでは限界があると感じた。立法に携わらないと、世の中を変えることはできないと思い、議員になった。」と聞き、なるほどと思った。また、公務員が立候補するためには、職を辞めなければいけないのに比べ、自営業である弁護士の場合、立候補しても弁護士を辞めなくてもいいし、仮に落選しても弁護士を続けられるので、立候補し易いということも聞いた。最近の若い人の中には、本当は政治家を目指しているが、政治家になるには弁護士になっておいたほうが有利になったり箔がつくから、とりあえず弁護士になったという人がいるということも聞いた。団体によっては、弁護士を特別に優遇し、議員の道を用意してくれるところもあるという。

弁護士は、司法試験合格者数が増え、ほとんどが弁護士になってしまうので、過剰時代になってしまった。議員や首長は、立法に携わることができ、国や地方公共団体を動かすことが出来るので、若い弁護士の方達には、第2・第3の仙谷氏、枝野氏、福島氏…になって欲しいと思います。

石原東京都知事も応援に駆けつけた橋下氏が、今後どのようなことを行なっていかれるのか、目が離せません。「ハシズム」が「ファシズム」にならないよう願い、目を離してはいけないとも思っています。

島田紳助氏と街宣車、暴力団排除条例

2011年09月30日 カテゴリー:民事

島田紳助氏が、暴力団との交際を原因として、芸能界を引退するという記者会見を開いてから、だいぶ経った。紳助氏が暴力団と関係をもったきっかけは、番組で発言したことについて、右翼団体が街宣車でテレビ局の周りを廻るなどしたことから逃れるためであったという。

ビートたけし氏は、9月29日号の週間誌で、
「(自分も)右翼団体から街宣活動をかけられたことがあったけど、オイラは紳助と違う。ヤクザに仲介なんて頼んだことない。一人で住吉連合会の堀さんのところに行って土下座して謝ったの。その後、右翼の幹部にも会ってそれで終わりだよ」と述べている。
なかなか、たけし氏のようにやれるものではない。

なぜ紳助氏もたけし氏も、弁護士に頼んでくれないのだろうか。

弁護士ならば、街宣車は、不特定多数に聞こえるほど大きなスピーカーで繰り返し叫び続けるため、それらをビデオやボイスレコーダーで証拠化して、名誉毀損罪や業務妨害罪で告訴するなどして、警察権力に動いてもらうだろう。弁護士が、街宣活動により業務を妨害されてしまうケースは、1つや2つではないと聞いている。自分の事務所に街宣活動をかけられた弁護士は、測定器で騒音量を測るなどして、右翼団体が事務所の周りを街宣活動しないよう仮処分決定を得て闘った人もいる(民事的解決)。
また、「悪徳弁護士○○は、交通事故の被害者をいじめている…」等と街宣車でやられたが、無視して、その右翼が関わっている交通事故事件を早急に解決したら、街宣活動はパタっと止まったという経験をした弁護士もいる。

かって、元総理大臣を「ほめ殺し」した右翼団体がいたが、それとても褒めて殺すので、内容を聞けば名誉毀損罪にあたると立証できると思われる。弁護士であるから、あくまでも正攻法でいくしかない。

もっとも、弁護士は権力をもっていないので、早い解決をするには警察に動いてもらうのが1番だというつらさはある。民事不介入の警察に動いてもらうには刑事事件だということをわかってもらうことである。

ところで、不思議なのは、右翼団体の街宣活動を押さえるために、なぜヤクザに頼むことが効果的かである。種類が違う団体のように思えるが、どうしてだろう。裏で手を結んでいるものなのでしょうか。

名古屋市では、市道に放置される自動車をどうするか頭を痛めているが、数年前には街宣車が放置されていたこともあった。街宣車は、黒色の塗装などをして右翼団体名を書き、大きなスピーカーで軍歌を鳴らしていく車である。名古屋の裁判所や愛知県警本部のすぐ向かいに護国神社があるため、定期的に街宣車が何台も集結し、裁判所や警察付近を走り、騒音としか思われないような大きな音で軍歌やスローガンを叫びながら、政党の県連本部などを廻っていくのである。中を見ることはなかなかできないが、乗員は1名かせいぜい数名と思われる。おそろしげな車に見えるが、バスなどの車を改造した車である。

東京都や大阪府、愛知県など各都道府県では、4月1日から10月1日にかけて、暴力団排除条例が施行された。 昨年あたりから、これまで交わしていた事業者間の契約書に次のような条項が入ることが増えた。

「反社会勢力との取引拒絶
1 甲及び甲の親会社・子会社等の関係会社並びにそれらの役員、従業員等が、以下の反社会勢力のいずれにも該当しないこと、かつ将来にわたっても該当しないことを確約します。
2 甲が前項の規定に違反していることが判明した場合、乙は直ちに契約解除できるものとし…。  反社会勢力とは、暴力団・暴力団員・暴力団準構成員、暴力団関係企業・総会屋等・社会運動等標榜ゴロ・特殊知能暴力集団等をいう。」

そして、知り合いの元警察官が企業の顧問として再就職されるようになった。
警察官の天下り先がすごく広がったと思われる。

たけし氏は、「本当に助かる。これからは条例を盾に暴力団との交際を断れるからありがたい」と述べている。

法律的に見ると、ある集団に属している人々をその集団に属しているからという理由のみで社会的に排除し、罰則まで課すという法理はこわいなという疑問は残るけれど…

税務訴訟と噂の真相

2010年09月08日 カテゴリー:民事

年金型生命保険の課税方法が二重課税であるという最高裁判決の報道にふれ、最高裁までよく闘われたな、という感慨を持ちました。税務訴訟は、勝訴率が極めて低いと言われています。しかも、担当した弁護士や税理士、歯向かった当事者に税務調査が入るというまことしやかな噂があるのです。

しかし、近時、勝訴したケースの報道を目にすることが、かつてより増えたように思います。また、判決には至らないが、実質的な勝訴をしているケースも多いのではないかと思います。もっと情報を交換して、日本で最強の債権者に対抗する方法を共有させていただけたらと思います。

事案

亡くなった父親と、遺言でほとんどを相続した長男の2名は、主債務者A社(代表者Bは、著名な詐欺師であることが後に判明)が金融業者Cからお金を借りる際、連帯保証人になった。父親の所有土地の一部には、3億数千万円の抵当権も設定された。

Bは、「うちが介護施設の建物を建てます。あなた方は、お金を出す必要はありません。ただ、連帯保証して担保をつけさせていただければよいのです。相続税対策にもなるし、もうかります。」等と述べたが、Cに割賦返済金を2回支払ったのみで、行方をくらました。

他の弁護士に頼んで、金融業者Cを被告にして、父親と長男は訴訟提起したが、Cの不法行為性を立証できず、3億2000万円を支払うとの敗訴的和解をせざるをえなかった。

裁判の終局段階で父親が失意のうちに死亡し、長男は遺言により抵当権が設定されている本件土地を相続した。そして、その土地を売却して、約3億2000万円を金融業者Cに支払った。

そこで、本件土地を資産、3億2000万円を負債として計上して、相続税の申告をした。

後に税務調査が入った。

所轄税務署は、「父親と長男の2名が連帯保証をしていたのに、父親が全額支払ったのだから、父親は長男に対して3億2000万円の2分の1である1億6000万円の求償権がある。それは資産だから課税する。無申告加算税もだ。」等と述べ、ついでに古い家も固定資産税額より1000万円以上高く評価して、約3500万円の課税をしてきた。

そこで、長男は、原処分庁である所轄税務署に異議申立をなし、さらに、国税不服審判長に審査請求をなし、それでも国自らが処分の取消をしてくれなかったので、やむを得ず、国を被告として税務訴訟に踏み切らざるを得なかった。

長男の主張の骨子は、

(1)2重課税だ。資産を有していなかった長男が、相続により金持ちになったから、求償権は資産となるという税務署の論理は2重課税になる。

(2) 混同により求償権は消滅した。長男が遺言により父親の有する求償権を相続し、債権と債務が同一人に帰したから消滅した。

税務訴訟はどうなったかですが、何と第1回口頭弁論期日の3日前に、長男から私に電話がありました。「○○税務署の人が来て、お金払ってあげるから振り込み口座を教えてくれと言うんだけど、教えていい?」と。所轄税務署に聞くと、「すべて主張どおりに支払う。利息もつける。そういうことになった。お金は10日以内ぐらいに支払われる。」という回答。

拍子抜けしました。

理由はと聞くと、「二重課税になるという見解だから。」と悔しそうに答えました。

第1回口頭弁論期日、合議体でした。

国側代理人は、訟務検事が3人も来ていました。

直前に提出してきた答弁書には、「既に相続税の更正通知書及び過少申告加算税の賦課決定通知書を送達したところであり、…本件訴えは不適法なものというべきである。」

この訴訟をしたから税務署が更正等をしたのに、本件訴えは不適法とは、どの口でいえるのだろうか。訟務検事は取下げを要求したが応じず、訴訟費用は被告の負担とするとの判決をもらい、訴訟費用を回収しました。

このように、判決には至らなかったけど実質勝訴したというケースはありませんか?

ぜひお教え下さい。

ところで、噂の真相ですが、長男にも何と弁護士にも税務調査が入りました。

スッポンのような税務官で四苦八苦でした。こんなこと、ありですか。

それでもめげずに税務問題に取り組んでいきたいと思います。

 

違憲判決をもっと気軽に

2010年06月22日 カテゴリー:民事

1.「顔の傷の補償に性差があるのは違憲である」という判決が、2010年5月27日、京都地裁でなされたという新聞報道があった。労災のケースであった。弁護団の糸瀬美保弁護士にお聞きしたところ、国側は控訴せず、判決が確定したとのことであった。本当によかった。 厚生労働省令や自賠法施行令第2条別表第二は、外貌醜状(顔の傷等)の後遺障害の補償金額について、次の通り規定している。

※「著しい醜状」とは、「顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕、長さ5cm以上の線状痕又は10円銅貨 大以上の組織陥凹」
※「醜状」とは、「顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は 長さ3cm以上の線上痕」 ※「著しい醜状」とは、「顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕、長さ5cm以上の線状痕又は10円銅貨 大以上の組織陥凹」
※「醜状」とは、「顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は 長さ3cm以上の線上痕」

男 性 女 性 男女間格差の金額
(男性に比べて
女性が何倍か)
後遺障害の
等級
保険金額 後遺障害の
等級
保険金額
著しい醜状を
残すもの
12級 224万円 7級 1051万円 約5倍
醜状を残すもの 14級 75万円 12級 224万円 約3倍

これは明らかな性差である。
政治的なものではなく、明らかな性差であるにもかかわらず、裁判所はなかなか違憲判決を出してくれなかった。

2.実は、私も、2007年から2008年にかけて、交通事故により、男性の顔に著しい醜状が残ったケースで、違憲判決を求めて訴訟活動を行なった。
二木雄策先生と伊田広行先生に意見書を書いてもらい、提出した。「運命の顔 藤井輝明著」「ユニークフェイス 石井政之ら著」も提出した。アンケートをとり、その結果も提出した。   二木先生は、経済学者で自らの娘さんを交通事故で亡くし逸失利益に性差があることの不合理性・不条理性を鋭くつき、「交通死」(岩波新書)を著し問題提起された方である。伊田先生は、社会学者で性同一性障害に詳しい方である。このような男性に対する差別を争うことは、「命の値段は低いが、顔だけ高い」と評価されている女性に対する差別との闘いでもある。
しかし、1審の名古屋地裁の城内和昭裁判官は、あっさり合憲とした。2審の名古屋高裁は、以下のように判示し、合憲とした。 「外貌醜状という後遺障害においては、それによって生じる被害の程度が男女により大きな差のあることは否めないところである。まず、現在においても、一般的には、自己の容姿に対する関心度は女性の方が高く、また、社会の関心も男性の容姿より女性のそれに対する関心の方が高いということができる。したがって、同程度の外貌醜状であっても、・ ・ ・ ・慰謝料額も(女性を)高額とするのが相当である。次に、逸失利益であるが、同程度の外貌醜状であっても、一般的には、男性より女性の方が就職それ自体が制約されてしまう場合や、その職業の継続に困難を来す場合が多く、しかもその影響を受ける期間も長きにわたる可能性が高いということができる。したがって、同程度の外貌醜状であっても、男性よりも女性の逸失利益を高額とするのが相当である。そして、自賠責保険が基本的には損害賠償を保障する制度であり、別表が類型化を図って大量の事案を迅速公平に処理するために定められたものであることからすれば、同程度の外貌醜状の場合についても上記の男女差に基づいて類型化を図り、男性と女性の後遺障害の等級に差異を設けることの方が合理的である。」(名古屋高等裁判所平成18年9月13日判決)

古い!この裁判所も違憲判決を書くのは嫌なのかなと思っていた。が、そうではなかった。

3.この判決をなした名古屋高裁の裁判長は、あのイラク派遣は違憲であると判示した青山邦夫裁判長であった。 「イラクにおいて航空自衛隊が行なっている空輸活動は、武力行使を禁止したイラクにおける人道復興支援及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(イラク特措法)2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含む。」(平成20年4月17日判決 判例時報2056 P.74)

控訴人の請求自体は棄却されたため、被控訴人である国は上告することができなかった。国が上告できない工夫をし、詳細な事実認定をした渾身の判決であった。この判決は大きな波紋をよび、政府にも影響を与えたと思われる。

4.しかし、ショックだったのは、青山裁判長が判決後、間もなく定年を待たずして退職されたことだった。 私は、この種の違憲判決をだした裁判官は人事で報復を受けてきたと聞いている。

いまだ違憲判決をいただきたいものがある。裁判官を辞める覚悟をしなくても、窓際へ追いやられることもなく、良心のみに従って判決ができるようにならなければ、国民の裁判を受ける権利は保障されない。(憲法76条3項)



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