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コラム

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内部通報制度を生かしている企業はあるのか?

2012年01月27日 カテゴリー:企業問題, 商事

内部通報制度とは、企業において、法令違反や不正行為の発生またはその恐れのある状況を知った内部の者が、その状況に適切に対応できる窓口に通報することができる制度のことである。その窓口が企業外の第三者の弁護士であっても、企業の経営陣にフィードバックして不正行為を正すなどするという制度である。企業によって「ヘルプライン」「コンプライアンス相談窓口」などという呼び名が付けられている。江戸時代の目安箱に似た制度といえようか。

しかし、内部通報制度を利用して、企業内で正すことができたケースはないのではないか。
あるのであればぜひ教えていただきたい。
内部通報したことによって、企業内で自浄作用が働くのであれば、外部に知られることなく企業の信用も損なわないため、企業にとっては大きな利益となり、重要な制度であるはずだ。

オリンパスのことは連日のように報道されている。
上場を維持すると東京証券取引所が決めた後、オリンパスと提携したい大企業が3社も名乗りをあげている。なんといっても、オリンパスグループは医療関連事業を中心とし、内視鏡市場で75%のシェアをもつトップメーカーである。医療事業は、これからの日本産業の柱の一つだ。
テレビドラマ「医龍」(天才心臓外科医 坂口憲二、憎まれ役 岸部一徳)では、医療を産業と考える憎まれ役がロシアや中国から富裕層を招いて手術を受けさせ、大学病院を企業として発展させようとしている。また、外科を恨む内視鏡の達人医師(遠藤憲一)の登場により、心臓外科が存亡の危機に陥るというストーリーが「医龍3」で展開され、内視鏡の素晴らしさがクローズアップされている。ドラマ「最上の命医」でも内視鏡は活躍している。
そのシェアを75%も持っているのがオリンパスだ。

しかし、オリンパスは自浄作用が全く働かなかった。
外国人の元代表取締役ウッドフォード氏は、同社が行なった一連の企業買収は正当ではないことに気付き、大手監査法人に連絡を取って調査してもらい、取締役会で示した。ところが、取締役会のとった対応は、不正行為を正すどころか同氏を解任した。そのため、イギリスへ帰国した同氏は、フィナンシャルタイムズ紙や重大不正監視局に自分の言い分を語り、オリンパスの不正行為がグローバルに明らかになったのである。

同社の飛ばしによる粉飾決算という大きな問題が明らかになる前に、従業員が上司の不正行為を内部通報した件が裁判で争われ、地裁と高裁が全く結論の異なる判決をしたのは2010年と2011年のことである。
東京地裁は、取引先からの引き抜きについて内部通報をした従業員に対する配転命令権の行使について、不当な動機目的が認められず、権利濫用に当たらないと判示した。
しかし、東京高裁は、取引先の従業員の引き抜き等を会社が設置したコンプライアンス室に通報した従業員を三度にわたり配置転換したことについて、最初の配転命令が内部通報をしたことを動機とする不当なものであり、続く二度の配転命令がその延長であるとし、上司の不法行為責任、会社の使用者責任を肯定した。東京高裁は、内部通報した従業員が承諾していないにもかかわらず、その人の氏名や通報内容を開示し、それにより上司が配転命令をしたという事実を認定した。一審判決の後、二度の配転命令をなし、これまでのキャリアが生かせない仕事に追いやったのである。

オリンパスは上告しているとのことであるが、飛ばしが明らかになった今、同社が逆転勝訴することはないと思う。同社は、コンプライアンス・ヘルプラインという内部通報窓口を2005年に開設しているが、原則として所属部署や氏名をあきらかにしなければならず、第三者窓口もないお粗末なものであった。

過去の企業の不正が明らかになった事案でも内部通報制度は機能していない。
例えば、三菱自動車のリコール隠しは30年も続いた。それが暴かれたのは、内部の者が外部の監督官庁に電話で通報したことによる。朝日新聞(2002年10月29日)によると、
「名乗らない男性から運輸省自動車交通局に1本の電話があった。2000年6月12日午後2時。『三菱自動車工業は、客からのクレーム情報を運輸省に見せるものと見せないものに二重処理している』男性は、続けて二重処理を発見する方法まで説明した。『見せられない書類は男女のロッカールームにある』『本社と岡崎工場(愛知県)、ディーラーに同時に立入検査し、情報を照合すれば判明する』…」
男性に教えられたとおり、事前予告もなく、同時に立入検査をして、ようやくリコール隠しが暴かれたのである。

しかし、その後もグループの三菱ふそうはリコール隠しをした。
そして、2002年1月トレーラーのタイヤ(重さ140kg)が空を飛び母子を直撃し、母は死亡、子2人はけがをした。また、同年10月、三菱自動車製大型車のクラッチ系統部品の欠陥によりブレーキが効かず、運転手は、他者を巻き込み大惨事を引き起こすことを避けて、自ら道路脇にあった地下道入口の構造物に衝突させ、死亡したとみられている。おりしも、2012年2月11日の朝刊で「三菱自動車元部長ら有罪確定 ハブ破損母子死傷 最高裁が2月8日上告棄却」と報道された。三菱ふそう元会長らについては、2010年3月9日有罪が確定し、法人としての三菱自動車は、上告を行なわず、2008年7月頃、罰金20万円の有罪が確定している。

近年、企業の不正が連日のように報道されているが、マスコミや監督官庁という外部への告発によって明らかになっていることが多いのではないのだろうか。 内部通報制度は、企業の内部統制システムの中で重要な制度であるとか、内部通報制度がきちんと整備されていればもっと早く不正が発覚したはずだという意見がある。しかし、どのように内部通報制度をつくっても、内部で正すことができるのかという疑問を持たざるを得ない現状がある。残念です。