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コラム

Monthly Archives: 1月 2013

カルテのないC型肝炎患者の闘い(1)

2013年01月22日 カテゴリー:C型肝炎給付金請求訴訟

1.薬害C型肝炎

C型肝炎ウィルスに汚染されていた血液製剤(特定フィブリノゲン、フ ィブリン糊、クリスマシン等、以下「フィブリノゲン等」という。)を、 昭和39年6月から平成6年頃までの間、止血剤や接着剤として投与された患者さんが、後にC型肝炎ウィルスに感染していたことが判明した。
女性であれば、出産時に投与されていたことが多いが、その他の手術でも投与されており、男性も手術時に投与されC型肝炎ウィルスに感染していたケースがある。

2.C型肝炎救済特別措置法

  • C型肝炎訴訟の解決(感染被害者の早期・一律救済)のため、平成20年1月、福田総理大臣支持率下落を食い止めようという力学が働き、 舛添要一厚労大臣、大阪高裁裁判官、そしてカルテの残っているC型肝炎患者の
    弁護団団長鈴木利廣弁護士らの尽力により、 各地の訴訟は一律解決という美名のもと和解した。そして、C型肝炎救済特別措置法が議員立法により制定・施行(平成20年1月16日)された。
  • 特定の血液製剤(特定フィブリノゲン製剤、特定血液凝固第Ⅸ因子製剤)の投与を受けたことによって、C型肝炎ウィルスに感染された方又は相続人に対し、症状に応じて給付金を支給。【給付内容】

    肝がん・肝硬変、死亡 :4000万円

    慢性肝炎       :2000万円

    無症候性キャリア   :1200万円

  • 給付を受けようとする者は、国を被告とする訴訟を提起し、給付対象者であることを裁判手続の中で確認。確認されたら証明資料(判決、和解等)と併せて、
    独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に請求を行う。 請求又はその前提となる訴えの提起等は、平成30年1月15日までに(時限立法)行わなければならない。

 

3.カルテのない難しさ

国を被告とする国家賠償請求訴訟において、通常、立証責任は原告にあるとされている。

原告となるC型肝炎患者の多くは、フィブリノゲン等の投与を受けた事実を立証することが困難を極めるのだ。なぜなら、国は、カルテを要求するが、カルテの保管期間が5年という短いもので、カルテのない被害者の方が圧倒的に多いからだ。カルテに替わる証明も医療機関からもらえない被害者も多いからである。

薬害C型肝炎訴訟原告の佐藤光俊さんは、次のとおり述べている。

(1)私は、高校生の時、血気胸の治療にC型肝炎ウィルス入りのフィブリ ン糊を投与され、C型肝炎になりました。長い間の治療は、副作用もあり、とても辛かったです。C型肝炎は移る病気なので、理解してくれる女性がなかなか現れず、結婚も遅く、ようやく平成11年に結婚することができました。

しかし、それ以後も私には治療が必要でした。妻は献身的に看病をしてくれました。

ところが、その妻が、乳がんであることがわかり、私の看病に力を入れていたため、発見が遅れ、平成21年3月、亡くなってしまいました。私に残されたのは当時4歳(平成16年5月22日生)の一人娘です。私は、その子を抱え、仕事をし、何とか生きてきました。

(2)私には、カルテが残っておらず、カルテのある弁護団からは弁護することを断られました。平成20年、C型肝炎訴訟が勝訴したというニュースが華々しく流れたのを複雑な思いで見ました。「C型肝炎特別措置法成立。一律救済!」というニュースもあったため、私も救ってもらえるかと期待しました。ところが、やはり、カルテがないと難しいというのです。製薬会社ですら薬害C型肝炎患者は、1万人以上いると言っているにもかかわらず、これまでに裁判で救済されたのは約1900人だそうです。
私は、残り8000人以上の中の1人なのです。

(3)カルテが残っていないのは、私たち原告のせいではありません。被告である国の責任です。 過去に薬害を起こしているにもかかわらず、カルテの保存期間に関する医師法を改正せず放置していたのは国です。カルテが残っていないのは、私たち原告のせいではありません。被告である国の責任です。

(4)立証責任を公平にしてください。カルテが残っていないことについて、何の責任もない原告に、カルテが残っているのと同じような立証責任を課さないでください。原告が現在残っている証拠でできる限り立証すれば、その余の立証は、国にさせてください。国が、あくまでも原告にはフィブリノゲン製剤が投与されていないと主張したいのなら、国がそれを立証すべきです。

昭和39年3月、ライシャワー駐日米大使が襲撃され、輸血で肝炎に感染した時、売血をやめるべきだという問題提起がされ、昭和39年8月、献血推進を閣議決定しました。それにもかかわらず、日本国は、昭和39年6月、フィブリノゲン製剤の製造を承認し、まもなくミドリ十字は米国の売血でつくったフィブリノゲン製剤を病院に売るようになったのです。

さらに、昭和52年、アメリカがフィブリノゲン製剤の承認をやめたにもかかわらず、日本国は放置しました。そのような国が立証責任を負うべきです。

また、出産や心臓手術や気胸など、当時、フィブリノゲン製剤やフィブリン糊が使用されていた蓋然性が高い分野の場合には、フィブリノゲン製剤が投与されていないと主張したいのなら、国がそれを立証すべきです。原告の中には、フィブリノゲン製剤やフィブリン糊やクリスマシンを投与した医師が死んでいるケースも多いのです。医師が死んだのは、原告の責任ではありません。平成16年になってようやく、フィブリノゲン製剤納入先医療機関を公表した国の責任です。

(5)私は、このような日本国の医療の現状及び裁判の現状を見ると、それを改めさせない限り、死んでも死にきれません。私を一生懸命看護し、ガンで亡くなった妻のためにも、裁判所には立証責任の公平な分配をするよう強く求めるものです。

(6)私達原告が流した涙と苦しみ続けた病気のつらさ、受けた差別、生活を脅かした治療費の重圧を、どうぞ、わかって下さい。カルテのある弁護団と福田首相の日本国が2008年(平成20年)1月に交わした基本合意書は、カルテの残っていない原告と弁護団を縛ることはできません。立証責任を公平にした真に公正な裁判をお願いします。

 

参考文献

薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班「薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究中間報告」(2009年3月27日)
『薬害肝炎裁判史』薬害肝炎弁護団編(日本評論社2012年1月)
『ドキュメント検証C型肝炎-薬害を放置した国の大罪』フジテレビC型肝炎取材班著(小学館2004年7月)
『厚生労働省戦記』舛添要一著(中央公論新社2010年4月)
『舛添メモ』舛添要一著(小学館2009年12月)