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コラム

為替デリバティブ

2012年08月10日 カテゴリー:商事

マスコミがオリンピック一辺倒になっている間も経済はグローバルに動いている。昨今の証券会社や銀行は、どぎついほど利益を追求し、インサイダーなどが問題になっている。

2009年末のギリシャ債務問題に始まったユーロ危機で、不良債権まみれの各銀行に救済の道筋をつけたのはドイツ銀行だと言われている。ドイツ銀行の前CEOアッカーマン氏退任後は、アンシュー・ジェイン氏がCEOになるとのことであるが、同氏はメリルリンチで腕を磨いたデリバティブのプロだそうだ。ギャンブラーの言いなりになるとドイツがヨーロッパで信頼を失うのではないかという声もある。

デリバティブ自体、庶民である私にはピンとこない。
先頃、南山大学のデリバティブ取引の解約による損失額が約160億円に上ることが報道されていた。藤田衛生保健大学では、約120億円の損失だった。テレビ局でも数十億のデリバティブ損失を出しているところもある。

昨今、中小企業は為替デリバティブによる損害に頭を抱えている。
A社は、2005年から2007年の間に大手MTU銀行に勧められて5口の為替デリバティブ契約を締結させられた。2007年7月に契約させられたギャップリアノックアウトクーポンスワップという商品は、「3ヶ月毎に106円20銭より円安の際は106円20銭で15万ドルを購入。106円20銭より円高の際は116円20銭で30万ドル購入。また2010年10月の前回受け払い日の5営業日前以降に117円40銭よりも円安となれば、30万ドルのドル買いの義務が消滅する」というものである。
当時、1ドル120円ぐらいであった。副支店長は、「円安が続くからお得ですよ」と言って勧め、最後には土下座までして勧めた。初めて銀行からの接待を受け、支店長と一緒にゴルフへ出かけた。しかし、現在となってみれば、1ドル78円ぐらいなので、この商品だけでも、あと5年買い続けなければいけないので、78円ぐらいで推移すれば、約2億3000万円の損失が出てしまう。他の4口の商品も損失の垂れ流しである。
B社は、もっと損失が大きく、今のままのドル円レートで10億以上の損失になる。
両社とも本業は黒字で頑張っているが、この為替デリバティブに頭を抱えているのである。

金融庁が銀行に対応策をとるよう求めたので、為替デリバティブ取引をめぐる紛争を解決するために全銀協やFINMAC(全国証券業協会)のあっせんを広報している。

私は、A社と共にMTU銀行に赴いて、「優越的地位に基づいて勧めたのではないか。原則解約できないが、銀行が同意すれば解約でき、銀行が提示する解約清算金を支払わなければならないというのはあまりに理不尽な条項ではないか。解約清算金の計算方法を明確にしてほしい。A社に必要なドル量を超えてデリバティブ取引を勧めたという認識はあるか」等を尋ねたが、本店から来た銀行員は、「優越的地位に基づいているとは思っていない。解約清算金の計算方法は開示できない。」等というのみであった。

B社は、FINMACに、あっせん申立てをした。 あっせん委員は名古屋の女性弁護士であった。あっせん委員は、「最近、解決の基準ができた。従前、申立て以降のものについて銀行の負担割合を決め、あっせん案を出していたが、デリバティブ取引をした時からのもの全てについて、あっせん案を出すことになった。負担するのは1割から3割の範囲で、御社はドルの実需がデリバティブ取引によるドル量以上にあるので、本来、銀行の負担割合はゼロとなってもおかしくないが、最後の1口は銀行側にもお手つきがあると思われるので1割というあっせん案を出します」と述べ、取り付く島がなかった。

ドルの実需があるかどうかが1番のメルクマールになっており、どのように勧誘されたかということは全く考慮されなかった。よほど優越的地位の濫用といえる場合でなければ銀行の負担割合が3割というあっせん案は出ないという口ぶりであった。

どの中小企業も取引のはじめの頃は1ドル120円前後であったため、呼び水のように少しは利益を得ている。したがって、はじめからの全ての損失についてのあっせん案であると言われても、あまり有難みがないのであった。そのため、B社はあっせん案をのむわけにはいかなかった。

バクチみたいな為替デリバティブ商品を売りつけられた中小企業の怒りはなかなか収まらない。あっせん案を画一的に定めず、最高10割でも銀行が負担するような血が通ったあっせんに変えてほしい。あっせんが機能しないのでは、あとは訴訟しかないが、訴訟は中小企業にとって負担が大きいし、裁判官にデリバティブ取引を理解してもらうためには弁護士の汗も必要になる。

内部通報制度を生かしている企業はあるのか?

2012年01月27日 カテゴリー:企業問題, 商事

内部通報制度とは、企業において、法令違反や不正行為の発生またはその恐れのある状況を知った内部の者が、その状況に適切に対応できる窓口に通報することができる制度のことである。その窓口が企業外の第三者の弁護士であっても、企業の経営陣にフィードバックして不正行為を正すなどするという制度である。企業によって「ヘルプライン」「コンプライアンス相談窓口」などという呼び名が付けられている。江戸時代の目安箱に似た制度といえようか。

しかし、内部通報制度を利用して、企業内で正すことができたケースはないのではないか。
あるのであればぜひ教えていただきたい。
内部通報したことによって、企業内で自浄作用が働くのであれば、外部に知られることなく企業の信用も損なわないため、企業にとっては大きな利益となり、重要な制度であるはずだ。

オリンパスのことは連日のように報道されている。
上場を維持すると東京証券取引所が決めた後、オリンパスと提携したい大企業が3社も名乗りをあげている。なんといっても、オリンパスグループは医療関連事業を中心とし、内視鏡市場で75%のシェアをもつトップメーカーである。医療事業は、これからの日本産業の柱の一つだ。
テレビドラマ「医龍」(天才心臓外科医 坂口憲二、憎まれ役 岸部一徳)では、医療を産業と考える憎まれ役がロシアや中国から富裕層を招いて手術を受けさせ、大学病院を企業として発展させようとしている。また、外科を恨む内視鏡の達人医師(遠藤憲一)の登場により、心臓外科が存亡の危機に陥るというストーリーが「医龍3」で展開され、内視鏡の素晴らしさがクローズアップされている。ドラマ「最上の命医」でも内視鏡は活躍している。
そのシェアを75%も持っているのがオリンパスだ。

しかし、オリンパスは自浄作用が全く働かなかった。
外国人の元代表取締役ウッドフォード氏は、同社が行なった一連の企業買収は正当ではないことに気付き、大手監査法人に連絡を取って調査してもらい、取締役会で示した。ところが、取締役会のとった対応は、不正行為を正すどころか同氏を解任した。そのため、イギリスへ帰国した同氏は、フィナンシャルタイムズ紙や重大不正監視局に自分の言い分を語り、オリンパスの不正行為がグローバルに明らかになったのである。

同社の飛ばしによる粉飾決算という大きな問題が明らかになる前に、従業員が上司の不正行為を内部通報した件が裁判で争われ、地裁と高裁が全く結論の異なる判決をしたのは2010年と2011年のことである。
東京地裁は、取引先からの引き抜きについて内部通報をした従業員に対する配転命令権の行使について、不当な動機目的が認められず、権利濫用に当たらないと判示した。
しかし、東京高裁は、取引先の従業員の引き抜き等を会社が設置したコンプライアンス室に通報した従業員を三度にわたり配置転換したことについて、最初の配転命令が内部通報をしたことを動機とする不当なものであり、続く二度の配転命令がその延長であるとし、上司の不法行為責任、会社の使用者責任を肯定した。東京高裁は、内部通報した従業員が承諾していないにもかかわらず、その人の氏名や通報内容を開示し、それにより上司が配転命令をしたという事実を認定した。一審判決の後、二度の配転命令をなし、これまでのキャリアが生かせない仕事に追いやったのである。

オリンパスは上告しているとのことであるが、飛ばしが明らかになった今、同社が逆転勝訴することはないと思う。同社は、コンプライアンス・ヘルプラインという内部通報窓口を2005年に開設しているが、原則として所属部署や氏名をあきらかにしなければならず、第三者窓口もないお粗末なものであった。

過去の企業の不正が明らかになった事案でも内部通報制度は機能していない。
例えば、三菱自動車のリコール隠しは30年も続いた。それが暴かれたのは、内部の者が外部の監督官庁に電話で通報したことによる。朝日新聞(2002年10月29日)によると、
「名乗らない男性から運輸省自動車交通局に1本の電話があった。2000年6月12日午後2時。『三菱自動車工業は、客からのクレーム情報を運輸省に見せるものと見せないものに二重処理している』男性は、続けて二重処理を発見する方法まで説明した。『見せられない書類は男女のロッカールームにある』『本社と岡崎工場(愛知県)、ディーラーに同時に立入検査し、情報を照合すれば判明する』…」
男性に教えられたとおり、事前予告もなく、同時に立入検査をして、ようやくリコール隠しが暴かれたのである。

しかし、その後もグループの三菱ふそうはリコール隠しをした。
そして、2002年1月トレーラーのタイヤ(重さ140kg)が空を飛び母子を直撃し、母は死亡、子2人はけがをした。また、同年10月、三菱自動車製大型車のクラッチ系統部品の欠陥によりブレーキが効かず、運転手は、他者を巻き込み大惨事を引き起こすことを避けて、自ら道路脇にあった地下道入口の構造物に衝突させ、死亡したとみられている。おりしも、2012年2月11日の朝刊で「三菱自動車元部長ら有罪確定 ハブ破損母子死傷 最高裁が2月8日上告棄却」と報道された。三菱ふそう元会長らについては、2010年3月9日有罪が確定し、法人としての三菱自動車は、上告を行なわず、2008年7月頃、罰金20万円の有罪が確定している。

近年、企業の不正が連日のように報道されているが、マスコミや監督官庁という外部への告発によって明らかになっていることが多いのではないのだろうか。 内部通報制度は、企業の内部統制システムの中で重要な制度であるとか、内部通報制度がきちんと整備されていればもっと早く不正が発覚したはずだという意見がある。しかし、どのように内部通報制度をつくっても、内部で正すことができるのかという疑問を持たざるを得ない現状がある。残念です。



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