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コラム

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AIJ問題

2012年04月03日 カテゴリー:民事

AIJが厚生年金基金から預かったお金を消失させていた事件は、年金制度そのものの変更を迫るほど大きな波紋を呼んでいる。
2012年4月3日、参院財政金融委員会でAIJ投資顧問の浅川和彦社長らの参考人質疑が行なわれた。 浅川社長は「運用に失敗した事実の責任はあるが、だましたという認識は一切ない」と繰り返した。 AIJに45億円を運用委託した栃木県建設業厚生年金基金の渡辺理事長は、「運用実績を改ざんし、契約通り運用していなかったのだから詐欺以外のなにものでもない。当初から騙されていた」と批判した。年金基金への営業を担当したITM証券の西村社長は、「浅川社長にだます意思があったかどうかはわからないが、外形上はだましたように見える。運用実績に関する監査報告書について疑わなかったといえば嘘になる」等と述べたという。(4月3日付日経夕刊、中日夕刊)

なぜ参考人招致なのか。手ぬるい。
詐欺罪で逮捕してほしいと思っている厚生年金基金は多いのではないだろうか。

被害金額は数十億円と規模は異なるが、AIJの社長の言い分は、詐欺で実刑となった大和証券の社員によく似ているなと感じた。
大和証券に19年勤めていたベテラン女性社員Yが、元々の顧客等に対し、「ペイオフは、証券会社には無関係だから銀行に預けるより証券会社に預ける方が安心ですよ。年に1回、特定の顧客にのみあっせんする非公開商品があり、必ず儲かりますから○○円でいいから預からせて下さい。2ヶ月で11%の利息をつけますから。」「大和証券の株が安く手に入ります。ソニーの株が社員用で安く手に入ります。」等と言って勧誘し、数百万とか1000万とかの単位で何十人もからお金を預かった。1億円近いお金を預けた人もいた。後の方にだまされた人は1円も返してもらっていなかった。
発覚したのは2002年夏。民事訴訟が終わったのは2010年だった。被害者のうち10名の方から依頼を受け、中村警察に詐欺罪で告訴しに行った。告訴人をしぼると、告訴状を受理してくれた。
刑事が、数ヶ月かけて膨大な資料をもとにお金の動きを図式化して調べたところ、バブルの時は、株式を買うなどして運用していたが、バブルが崩壊すると、顧客から新たに預かったお金を他の顧客に返還するものにまわし、自転車操業していたことが判明し、検察官は詐欺罪で起訴してくれた。

刑事法廷で、Yは「だまし取ったつもりはありません。」「うそをついてお金を預かりました。でも約束どおり、本当に最後まで返そうと思っておりました。」と供述した。
AIJの社長と同じだ。

判決は、一審が、初犯でも、実刑6年、二審で5年だった。

名古屋高裁刑事部は、次のような判示をしている。
「外務員としての成績を上げるため、会社からは禁止されていたのに、一定の利益を保証する利益保証の約束や、預かった金員を外務員が自由に運用する一任取引の約束をした上で、金員を預かって株取引を行なってきたところ、いわゆるバブル景気の崩壊に伴う株価の下落によって、顧客から預かった金員が大幅に減少したのに、顧客からは利益金等の払い戻しを請求されるという状況となった。そこで被告人は、これらの顧客に対する払戻金に充てるため、他の顧客から金をだまし取ることを企て、原判示のとおり、架空の金融商品の買付代金等と称して被害者らから金員をだまし取ったというものである。」
(2004年8月23日名古屋高裁刑事第1部判決)

民事事件で、大和証券は、「10%以上もの運用益があるはずがない。原告らは、Yが違法なことをしていたことを知っていたはずだ。悪意であるから大和証券に賠償義務はない。少なくとも原告らには重過失がある。」と主張し、原告らの方があたかもYの犯罪に加担したかのように主張した。
これは、被害にあった厚生年金基金に対しても向けられる主張だと思われる。
しかし、だました方が一番悪いのは明らかだ。Yの監督をきちんとしなかった大和証券が悪いのは明らかだと言いたい。

大和証券では、1991年、会社ぐるみで損失補填をしていた事実が発覚している。社員には重いノルマを課していた。1998年1月にも2000年9月にも同種事件が発覚していたが、顧客に特別の注意喚起をしていなかった。名古屋地裁は、和解を勧め、被害者の過失は認めざるを得なかったが、大和証券から相当の和解金が支払われた。

Yに対しては判決をもらった。Yは、賠償責任を免れようと、事故発覚直後、自己破産を申し立てたが、免責は当然のことながら許可されなかった。約5年間、刑務所で働いたお金のうち10万円を送ってきただけであった。

国から預かっている代行部分にまで赤字が食い込む「代行割れ」を起こしている基金も増え、その数は200基金を超えるといわれている。国からの代行部分を返上して年金基金を解散するには赤字を企業が補填しなければならず、年金倒産になりかねない。

では、国が管理している厚生年金は、どうなのだろうか。NHKをみていると、何兆円も減少しているとのこと。だいぶん前には社会保険庁が流用していたこともありましたよね。高利回りで運用するために、新興国への投資をしているところもあるという。為替リスクや政情リスクもある。

日本のバブル崩壊、リーマンショック、ギリシャなどの危機。もうハイリターンは望まないで、未来の計画を立てるしかないのではないか。(年金積立金を支払う人は減少せず、高い運用益が見込まれる)という誤った予測のもとにつくられた制度は根本的に変えざるを得ないだろう。しかし、そうすると、生活保護は増加すると思われる。