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コラム

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カルテが残っていない薬害C型肝炎患者の闘い(26)

2018年01月14日 カテゴリー:C型肝炎給付金請求訴訟, コラム

カルテが残っていない薬害C型肝炎患者の闘い(26)

弁護士 北村明美

 

1. 今年の流行語大賞のひとつは「忖度」である。

『裁判所の正体 法服を着た役人たち』元裁判官瀬木比呂志、ジャーナリスト清水潔(新潮社・2017)の帯は、

“忖度と統制で判決は下る!原発差し止めで「左遷」、国賠訴訟は「原告敗訴決め打ち」、再審決定なら「退官覚悟」……!驚愕、戦慄の実態。”とある。

2017年12月13日、伊方原発の運転差し止め仮処分決定をした裁判長は、広島高裁の野々上友之裁判長である。同月下旬で退官することになっていたので、決定をしてすぐ退官が話題になっていた。

2008年4月17、自衛隊イラク派兵は違憲であるという判決をした名古屋高裁の青山邦夫裁判長は、その後、すぐ退官し、名城大学の教授となり、弁護士となった。原告からも、被告国からも、上告されないように工夫した判決でこの違憲判決は確定したのであった。

最高裁や政府から睨まれる判決をすれば、左遷が待っていることを裁判官たちはよく知っている。

左遷をされた裁判官は、樋口英明裁判長である。福井地裁において、樋口裁判長は、2014年5月21日に大飯原発の運転差止め判決をなし、2015年4月14日に高浜原発の再稼動差し止めの仮処分決定をした。

2015年5月頃、離婚調停の期日のため、名古屋家庭裁判所に行った私はとても驚いた。担当裁判官が、樋口裁判官だったからだ。三つ揃いのスーツを着てピシッとしておられたが、福井地裁の部総括がなぜ、名古屋家裁で離婚調停の担当をしておられるのか。現在は既に定年で退官しておられるとのことであるが、この目で、左遷を見たのであった。

2. 憲法76条3項は「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と規定して、高らかに「裁判官の独立」を謳っている。

裁判は公正に行われ、人権の保障が確保されなければならない。そのためには、司法権が立法権や行政権から独立していることが必要だ。日本だけでなく、多くの民主主義国家が三権分立制を採用している。裁判官の身分もしっかり保障しているように見える。

しかし、問題は人事である。最高裁の長たる裁判官は、「内閣の指名に基づいて」天皇が任命する。下級審裁判官は、「最高裁の指名した者」の名簿によって、内閣が任命する。判事補任官を志望する司法修習生を最高裁が指名しないことがあることを、この目で見てきた。任期は10年で、再任されることができるが、再任されず、大きな問題になったことがある。

さらに、現役裁判官にとって重要なのは、配転される裁判所や部である。左遷を禁じないと、司法権の独立・裁判官の独立は守ることができない。

3. 一方で、きわめて、エリート街道を歩き出世していく裁判官がおられる。名古屋地裁民事10部F裁判長は、若くして訟務検事(国の代理人)となり、司法研修所教官、最高裁民事局第一、第二、第三課長、最高裁民事局広報付にもなっており、近い将来、最高裁の中枢で下級審裁判官を統制する役割を果たしていかれるのではないかという方である。カルテのないC型肝炎訴訟は、この民事10部にも係属してしまっているのである。判検交流という裁判官の中立性が疑われる制度により、訟務検事になったことのある裁判官に、国賠訴訟を裁いて欲しくないなというのが人情である。

4. 薬害や集団予防接種の注射器等回し打ちによってC型肝炎に感染させられた被害者が提訴するのは、国家賠償請求訴訟である。国賠訴訟は「原告敗訴決め打ち」なんてことになってほしくない。政府や最高裁の意を忖度する判決を、国民はノー!なのだ。

原告らが、裁判官たちにアピールする方法は、傍聴したり、大きな社会問題にしたりするしかないのである。

 

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青山裁判長のことをよく覚えているのは、イラク自衛隊派兵違憲判決がなされるちょっと前に、青山裁判長から外貌醜状の男女逆差別の運用について、違憲ではないという控訴棄却の判決を、もらってしまったからである。

交通事故で顔に傷が残った男性の代理人をしていた私はとても残念に思った。外貌醜状の性差別は、その後まもなく他の地裁で違憲判決がでて、あれよあれよという間に性差別のない運用になっていった。

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