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コラム

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銀行とゴルフ会員権

2010年03月30日 カテゴリー:企業問題

弁護士の実務に携わるまで、自由競争を基本とする企業社会は、対等・平等のものであると思っていました。
しかし、自由競争とは、まさに弱肉強食!
大きく強い企業は、取引契約自体を自らに有利なものとし、弱い企業には、一方的に義務を課すものだということがわかりました。

自動車関連業界では、下請・孫請に対し、定期的に単価の切り下げを行ない、景気が悪くなると、さらに協力という美名のもとに単価を切り下げる等してくるものだということを知りました。

強く、優越的地位がある企業の代表選手は、金融機関です。
金融機関が提示する契約条項に異議を唱えても、それじゃあ貸さないと言われるだけです。融資を申し込めば、過去何年分かの確定申告書の控え等、財務状況を提出させられ、家族関係も全て把握され、物的担保に加えて連帯保証人までつけさせられます。メインバンクであれば、継続的に把握されています。

かつて、銀行から「当行が融資するから、ゴルフ会員権を買わないか」と勧められた中小企業がたくさんありました。メインバンクからの勧めでは、なかなか断ることもできません。一種の抱き合わせ販売のようなものです。

「『このゴルフ場は、地元の優良企業が経営しており、値上がりしますよ。預託金は返還されるのが当然です。』などと銀行が言うのだから、間違いないと思い、融資を受けてゴルフ会員権を買いました。融資の利率は高く、随分返済させられました。」
しかし、平成16年末、そのゴルフ場グループの4社を残した会社は、民事再生と特別清算を、名古屋地裁ではなく、東京地裁に申立て、ゴルフ会員権は紙切れになってしまいました。

こういう事案で銀行に対する損害賠償請求が裁判所で認められているケースは極めて少ないと思います。何社もの被害者の中小企業が集団で訴訟を起こしても、裁判所はなかなか理解してくれません。

調べたところ、被害者側が一審では負けているが、東京高裁で勝訴した事件がありました。銀行は、旧第一勧銀 現みずほ銀行、ゴルフ場は富士カントリー富岡倶楽部です。
事案は、ゴルフ会員権ローンを完済していなかったため、銀行が原告となって、ローン未払金等の請求をしたものです。

判決要旨は、次のとおりです。
「X銀行の行員はゴルフ会員権を売却し、融資成績を上げようとして、きわめて安易に、顧客であるYに本件ゴルフ会員権ローン契約を締結させて本件ゴルフ会員権を購入させたものであり、Yの本件ゴルフ会員権についての投資価値について、儲かることのみに目を奪われた決定的な思い込みをしている状況を放置し、相応の説明反論をしないまま購入の勧誘をしたものであって、不作為による欺罔行為に匹敵する過失があったというべきであり、X銀行の不法行為責任を否定することはできない。」
(金融・商事判例№1222/2005年8月15日号)

顧客である被告の過失は5割とされていますが、5割分だけでも、銀行の責任を認めてくれた画期的な判決です。

前述のゴルフ会社グループの会員権の売り方は、顧客とゴルフ会社がゴルフ会員権を売買するのと同時に、銀行はゴルフ会員権に質権を設定して会員権価額と入会金分のお金を貸します。そのお金は、顧客を素通りして、ゴルフ会社に支払われ、ゴルフ会社は、同額をその銀行に預金していました。また、ゴルフ会社は、ゴルフローンの連帯保証をしていることも判明しました。銀行とゴルフ会社はお互いに出向し人的交流もしていました。銀行としては、ゴルフローンの融資で利息を稼ぎ、預金獲得もでき、いいことがたくさんあったのです。

しかし、日本のプロ裁判官は、高度の立証責任を顧客である中小企業に課してきます。民事裁判にアメリカのようなディスカバリーや陪審制が導入されていたら、プロ裁判官とは違う判断を下すのではないでしょうか。ゴルフ場グループは、その後どうなったかですが、約半数は他社に売却しましたが、残り十数か所のゴルフ場の経営を続けているのです。舌を巻くほどのスキームで計画的にやらなければ、できるものではありません。