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コラム

Monthly Archives: 9月 2014

カルテのないC型肝炎患者の闘い(11)

2014年09月19日 カテゴリー:C型肝炎給付金請求訴訟

名古屋のカルテが残っていないC型肝炎訴訟において、平成26年8月20日午後3時、はじめて証人尋問が行われた。証人は、原告Nさんの大動脈弁を人工弁に置換する手術を担当した心臓血管外科医のA医師であった。
証人尋問が終了した時、A医師が挨拶をしたのは、原告らや原告弁護団ではなかった。被告国の医師資格をもつ代理人(現役の厚労省のキャリア組である)に対してであった。原告代理人は、A医師が証人に立ってくれただけで有り難かったため、A医師に十分すぎるほどの配慮をし、A医師が嫌だと思うことは尋問しないという方針をとっていた。しかし、被告国代理人やフィブリノゲン製剤のメーカー田辺三菱製薬㈱の代理人は、ズバッと聴いてきた。
争点の1つは、患者の原告Nさんの手術の際、本当にフィブリン糊を使ったのか否かである。手術は昭和60年、約29年前だ。A医師は「はじめ大動脈弁置換手術をした時、自信があった。ところが病室へ戻ったNさんに想定しない出血があることが判明し、急きょ、手術室に入れて、再開胸をし、止血処置をした。その再開胸の止血処置の際、フィブリン糊を確実に使ったことを覚えている。」「最初に縫った時に自信があったのに、自信がこんなところで崩れておったので、非常にがっかりしたことが記憶している原因です。」という趣旨の証言を何度もして下さった。

争点の2つ目は、カルテは残っていたが、そのカルテにフィブリン糊の事が全く書いていなかったことである。
製薬会社代理人:「今何が問題になっているかというのはもうおわかりだと思いますが、このカルテの中でフィブリン糊の記載が出てこないということですよ。・・・」
A医師:「医者としてはそこにそういうことを書くことはあんまりないと思いますね。フィブリン糊をばらまいたとか、そういうことを書くことが。」
製薬会社代理人:「その理由は何ですか。」
A医師:「止血操作は当たり前のことなので。」
製薬会社代理人:「ただこの再開胸で一番問題になっているのは、まさに止血じゃないんですか。いかに出血を止めるかということが問題なんですよね」
A医師:「「はい」としか言えない。」
その後も、なぜカルテにフィブリン糊を使ったことを書かなかったかということを追及され、「夜の緊急だったから」、「看護師が書かなかった」、「名大病院は、医師が看護師に指示することはなかった」、「フィブリン糊は医療補助品として使用した感覚がありカルテに記載はしなかった」等、A医師はいろいろな言い訳をせざるを得なかった。裁判長からもフィブリン糊を使ったかを医療記録に残すかどうかという点について尋問があった。
A医師:「私自身はそんなに細かく書いた記憶はありません、他の患者さんでも。」
裁判官:「証人はお書きになってなかったということですか。」
A医師:「はい、ちょっと雑でした。」
A医師には、さぞツラい2時間であったと思う。しつこく国側代理人や製薬会社代理人から追及され、裁判長からも尋問され、結局は雑でした等と言わざるを得なかった。

A医師の証人尋問から、名古屋大学医学部付属病院の心臓手術の際、フィブリノゲン製剤やフィブリン糊を使用しても、当時、ほとんどカルテには記載していないことがわかった。そうすると、Nさんだけでなく、他にもC型肝炎特別措置法で救済されるべき人がカルテに記載がないばかりに救済されていない可能性がある。思い当たる方は、Nさんのように立ち上がってほしいと心から願っている。なんといっても時限立法なので、平成30年1月までに裁判を起こさなければならないのだから・・・