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コラム

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東日本大震災と濫用的会社分割

2011年05月16日 カテゴリー:企業問題

2011年3月11日の長く大きな横揺れによって、息を呑む大きな被害が発生し、心の時間が止まってしまったようだった。ふと気がつくと、名古屋の裁判所はケヤキやユリの木の新緑に溢れ、名古屋特有の蒸し暑い夏の始まりを告げていた。

福島原発の放射能に覆われた地域では、家や工場や田畑や牧場は残っていても、何十年(何百年?)も使用できない。放射性物質の含まれた水を今でも海に際限もなく漏出させているため、漁業にもこの先どのくらいの期間、影響を与えるのだろうか。

被災者の中には、今後家を建てるにしても、従前の家のローンと併せて二重のローンに苦しむ人は多いと思われる。壊れた船のローンと新しく作らなければならない船の二重ローンや、農業機械や事業用設備・機械の二重ローンを抱えていく人も多いだろう。

良い財産だけを新しい会社に移し、債務を古い会社に残して、古い会社だけを整理することができたら、どんなに楽だろう。そんなことができるのなら、被災者の方々はいくらでも法人をつくり、法人格を利用して、少なくともゼロあるいはプラスからの出発とするだろう。

しかし、そんなことをすれば古い会社の債権者を害することは明らかだ。だから、政策的に救済されない限り、苦しくても二重ローンを抱えて頑張っていかざるを得ない。

一方で、被災していないにもかかわらず、会社分割を濫用して優良財産だけを新設会社に移し、債務を古い元の会社に残して、新設会社で今までと同じ事業を行い続ける会社がある。

東京や福岡ではいくつも報告されている。愛知県でも、優良資産だけではなく、従業員の全てと取締役の全ても新設会社に移し、元の会社は特別清算開始の申立をする会社がある。

このようなやり方は、会社分割の濫用ではないかということで、今、耳目を集めている。

平成22年5月27日 東京地裁は、

(1)株式会社の新設分割が詐害行為取消権の対象となることを認め、

(2)新設分割株式会社が新設分割の対価として新設分割設立株式会社の全株式を取得したとしても当該新設分割が新設分割株式会社の債権者を害するものと認め、

(3)詐害行為となる新設分割の目的資産が可分であり、当該新設分割を詐害行為として取り消し得る範囲は債権者の被保全債権の額が限度となるものの、その原状回復の方法としては逸出した資産の現物返還に代えて価格賠償を請求することができるとした。

新設分割設立会社は、控訴したが、平成22年10月27日、東京高裁は控訴を棄却した。

福岡地裁は、法人格否認の法理を使って、債権者を救った。

このような濫用的会社分割に、弁護士が加担していることは残念なことだ。

小泉・竹中時代の商法の改定によって何でもできることになってしまったが、健全な経済のために、今一度、会社法の改正が必要だと思われる。