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コラム

最高裁が「親の監督責任認めず」

2015年04月10日 カテゴリー:ニュースコラム

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親はどこまで責任を取るべきか。

最高裁は9日、「危険でない行為でたまたま子供が損害を与えた場合、親に賠償責任はない」との初判断を示しました。
この判決は、おそらく今後の流れに大きな影響を与えることでしょう。

今回の事件は2004年、当時小学6年生だった男の子がフリーキックの練習をしていたところから始まります。
ボールがうっかり道路の外に飛び出してしまい、バイクを運転していた80代の男性がボールを避けようとして転倒してしまいました。
男性は足を骨折し寝たきりとなって、約1年4か月後に誤嚥性肺炎で亡くなりました。
そして男性の遺族が子供の両親に対し、「監督責任を怠った」として賠償を求めたのです。

第一審の大阪地裁では1500万円の賠償命令、第二審の大阪高裁でも1180万円の賠償命令が出されました。
しかし今回の最高裁の判断では、第一審・第二審を破棄、請求が棄却されたのです。

判決理由は”偶然”であるから

何故このような逆転判決が出たのでしょうか。
4人の裁判官は、全員一致で判決を出したといいます。

「ゴールに向けて蹴ったボールが常態的に道路上に出ていたわけではなく、
 男児がわざわざ道路に向けて蹴ったわけでもない」

「ゴールに向けたフリーキックの練習は通常、危険はない」

そしてその上で、日常的な行為で子が人に損害を与えた場合について、
「危険を予想できたなどの特別な事情がない限り、親が監督義務を尽くしていなかったとは言えない」とし、
「通常のしつけをしており事故も予想できなかった」という結論に至ったそうです。

つまり、「偶然」起こってしまった事故であるために賠償請求が棄却されたのです。

 

「最高裁判断」の影響

これまで、このような悪意のない子供が引き起こした事故に関しては、ほとんどの場合親が賠償責任を負ってきました。
しかし、それを覆した今回の事例によって、今後の流れは大きく変わってくるでしょう。

例えば認知症患者による事例。
家族が目を離したすきに徘徊していた認知症患者が、列車にはねられ、鉄道会社から振替輸送費や人件費等の損害賠償を求められる事件がありました。この事件は昨年4月、名古屋高裁が認知症患者であった男性の妻に、約360万円の賠償を命じ、双方が上告中です。

「無慈悲」との声も多いこの事件、今回の最高裁判断を受けどんな流れになっていくのでしょうか。
気になるところです。

(参考:日本経済新聞 平成27年4月10日



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