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コラム

C型肝炎訴訟 カルテのないC型肝炎患者の闘い(2)

2013年03月18日 カテゴリー:C型肝炎給付金請求訴訟

C型肝炎訴訟 カルテの有無に左右される状況

カルテが残っていない薬害C型肝炎訴訟を、名古屋で、はじめて提起したのは、2012年12月20日である。すでに、東京地裁、大阪地裁、鹿児島、熊本…等で提起されており、大都市名古屋は後発組である。
被告指定代理人(検察官や裁判官が国の指定代理人となっている。)は、第一回公判期日に、最初は欠席するつもりだったため、2013年2月に指定された。ところが、原告が意見陳述をすることを原告団が裁判所に申し入れたところ、被告指定代理人は、出頭したいと申し出、再度、期日の調整が行なわれ、結局、第1回公判期日は4月10日となった。

被告指定代理人らからの答弁書は、請求棄却を求め、
「いわゆるC型肝炎訴訟については、C肝特措法の制定により、同訴訟における損害賠償請求の要件事実の一部が認められる場合にC肝特措法に基づく給付金の支給が受けられることとなったため、被告(厚生労働大臣)は、平成20年1月15日、薬害肝炎全国原告団・弁護団との間で、C肝特措法に基づく給付金の支給を受けることにより紛争を解決するための基本合意書を締結し、C肝特措法所定の事実関係が認められる者との間で、裁判上の和解を成立させることとしている。したがって、本件訴訟についても、原告らが基本合意書を前提とする和解を求めるのであれば、被告は、原告らから提出される証拠を踏まえ、基本合意書に基づく和解の可否を検討したいと考えている。」と記載してある。

「薬害肝炎全国原告団・弁護団」というのは、カルテの残っていた原告団とその弁護団(団長鈴木弁護士)のことである。一部の原告団とその弁護団が、国と締結した合意書が、当該原告団に入っていない原告(正確にいうと「カルテが残っていないので、入ることを断られた」原告)やその弁護団を拘束できるというのは、どういう論理だろうか。不可解だ。

薬害C型肝炎訴訟原告、佐藤静子さんの訴え

佐藤静子さんは、すでに肝がんと診断され、余命3年と言われたが、この訴訟の途中で死ぬわけにいかないと、3年を超えて生きている人である。
東京地裁で提訴したカルテのない薬害C型肝炎訴訟の原告でもあるが、2011年5月24日、次のように、意見を述べている。

* * *

被告国の上申書を読んで、私たち原告の請求が正当に取り扱っていただけるのか、大変心配になってきました。裁判の進め方について意見を述べさせていただきます。

国の上申書は特措法成立当時の原告団と被告とが取り交わした「基本合意書」と「覚書」に則ってこの裁判を進めることを求めています。しかし、特措法が成立してから3年4か月経ちましたが、これまで和解が成立したケースを見ますと、カルテがあるかカルテとほとんど変わりのない医療書面をもっている人に限って、和解による解決がされていると思います。これは国が上申書のとおりの運用を裁判所に求めたからだと思います。

私たちは「カルテがないC型肝炎訴訟原告団」です。文字通りカルテがありません。
カルテがないのは私たちの責任ではありません。私たちは出産した時期や外科手術を受けた時期が、カルテのある方々より相当古く、そのためにカルテもなく、中にはお医者さんも亡くなり、病院も廃院になっている原告も少なくありません。 私たちがC型肝炎になったのも当然古く、それだけ長く闘病しています。私も2006年肝臓ガンと宣告されました。

特措法は議員立法で成立しましたが、前文で、 「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害者の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。」 「フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤によってC型肝炎ウィルスに感染した方々が、日々、症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいるという困難な状況に思いをいたすと、我らは、人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならないと考えている。」と明確に謳っています。特措法成立時の附帯決議は、「『投与の事実』『因果関係』及び『症状』の認否に当たっては、カルテのみを根拠とすることなく、本人、家族等による記録、証言等も考慮すること。」と明確に決議していることはご承知のことと思います。

カルテやカルテと同等の医療関係文書がないと和解に応じないのは特措法や附帯決議に違反しています。裁判所におかれましては、国の上申書に影響を受けることなく、カルテが無い私たちの現実を直視していただき、当然のこととして私たちが一律救済の対象となるよう、適正に裁判を進めていただきたく、強くお願いいたします。



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