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コラム

C型肝炎訴訟 カルテのないC型肝炎患者の闘い(16)

2015年07月02日 カテゴリー:C型肝炎給付金請求訴訟

C型肝炎訴訟 医師の行方を探して原告の本人尋問に至る

産婦人科の早稲田医師に金沢で証言してもらった件について、ようやく国から和解をしたい旨の上申書が提出された。証人尋問をした日は2015年3月11日であったが、和解上申書が来たのは、その日から約3ヶ月後である。あまりにも遅すぎる。遅すぎて、早稲田医師が重い病に倒れた。20kgも痩せたという。入院しておられ、勝訴的和解ができるとの報告ができない状態である。

今のところ、被告国は、手術や出産を担当した医師や助産師の証言を強く求める。中立であるべき裁判所も、カルテがない責任が原告にあるわけではなく、被告国にあるにもかかわらず、立証責任の転換をしようともせず、被告国のやり方に唯々諾々と従っている。
原告らは、病院に行って、今医師はどこにおられるか、連絡先を教えてもらえないかと頼んでも、個人情報だから教えられないと言われ、肩を落として帰ってくる。やむを得ず、5名の原告は、医師や助産師の連絡先や住所につき、調査嘱託をした。
裁判所からの調査嘱託であれば、個人情報云々で門前払いされることはないと思われるからだった。

Nさんは、聖霊病院で出産したが、常位胎盤早期剥離のため帝王切開で大量出血をしている。担当した医師は3名。助産師は外国人だ。医師のうち1人は、同窓会名簿に死亡と記載してあった。医師のうちもう1人は、他の病院のホームページに出ていたので、そこに調査嘱託をしたところ、だいぶ前に退職し死亡したと聞いている、という回答が来た。もう1人の医師は他の病院にいるかもしれないことが調査嘱託でわかったが、そこに連絡すると、そういう医師は現在いないと言われたので、さらにその病院に調査嘱託をして行方を探さねばならない。外国人の助産師は、だいぶ前にヨーロッパへ行ったままであるという。
Nさんは、K市民病院でC型肝炎の治療を受けていた。担当医師は、患者に負担のかかる肝生検が好きで(他の患者にも肝生検をし、10年経つとまた肝生検を勧めている。)、肝生検を行い、その結果が慢性肝炎であれば副作用の強いインターフェロン治療を行う医師である。肝生検を行ったのが何年か前で、その後の経過を見れば、血小板が少なくなり、肝臓の表面が凸凹したり、左葉が膨大していても肝硬変という診断をしないままインターフェロンを行うのである。
Nさんは、60歳を過ぎていたのに、インターフェロン治療を受けさせられ、副作用で苦しむ中、肝硬変が悪化し腹水が溜まり脳症まで発症して、訴訟提起後の平成26年9月に死亡されたのであった。
ご遺族の夫は、Nさんの無念の思いを晴らすために、3人目の医師の居所がわかればどこへでも行く心構えをしておられる。

SさんとHさんの医師及び助産師については、出産した病院から「不明」「死亡」という回答が来た。被告国が要求する医師にも助産師にも証人に立ってもらうことができないことがはっきりした。こうなった以上、SさんやHさん自身が本人尋問で供述して立証するしかない。
SさんとHさんの本人尋問こそ、カルテのないC型肝炎訴訟における立証のあるべき姿であろうと思う。



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