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相続税と贈与税

2011年02月10日 カテゴリー:遺産相続

~弁護士北村明美(名古屋)の相続コラム~

 

名古屋は、今、税金に関する関心が高い。市民税を10%下げるために名古屋市議会のリコールを成立させ、圧勝して、再度、市長になり、自民党を離党した大村愛知県知事を誕生させた河村旋風が吹き荒れているからです(議員報酬に関する関心はもっと高いようですが…)。
民主党が舵を取る日本国は、法人税を引き下げることとし、ただでさえ財源がないので、相続税をあげることにしました。すでに、小規模宅地等の特例を受けることができる要件が厳しくなり、持ち家があったり、同居していない親族には、減額なしとなるなど相続税は上げられてしまっています。

さらに、基礎控除額を4割減らし、死亡保険金の非課税枠を縮小し、最高税率を引き上げるなど相続での税収入の増加を財源に当て込んでいると思われます。それでも足りなくて、消費税をやがては上げようとしています。一方で、景気対策として、贈与税を下げて、お金を持っている高齢者が子供や孫に生前贈与することにより、子供らがお金を使って経済を活性化してくれることも狙っています(親から20歳以上の子・孫に対する贈与税の税率構造の緩和や相続時精算課税制度の対象範囲を20歳以上の孫にも拡大)。

税法は、財源を確保したい財務省といい顔をしたい政治家のせめぎ合いによって、変更されたり、選挙が終わったら、増税されたりする不安定なものだと思います。また、何かを下げれば、何かを上げるというアメとムチによって、財源を確保してきました。相続税の値上げは、基礎控除額が、減ることによって、富裕層ではない人達にも相続税がかかってくる恐れがあるというので、関心が高いのです。

相続税や贈与税は、課税しやすい税であるといわれています。もともと相続税や贈与税は富の過度の集中や固定化を抑えるために導入されたものだからです。金持ちの富がそのまま代々受け継がれると、社会的・経済的地位も固定化されてしまうからです。

税務署の調査官は、相続税の調査をする際、初回から被相続人の預金口座の履歴やそれに関係すると思われる相続人の預金口座の履歴をもってきました。相続人が協力しないから履歴をとったわけではなかったので、驚きました。上手な調査官は、仏壇にまずお参りをして、相続人の心に入り込み、被相続人の趣味や財テク法を聞いて、財産を探っていきました。

最近、弁護士の脱税事件も大きく取り上げられています。ピエールカルダンの日本国内代理店を創業した社長は、弁護士でした。生前、スイス銀行で金融資産約25億円を運用していましたが、遺族がそれを隠して約11億円を脱税したとして、東京国税局が相続税法違反として横浜地検に告発しました(2011年1月18日夕刊)。その社長は、8年ほど裁判官をした後、弁護士に転じたとのことですが、商才に長けており、ブランドの商標権を大手メーカーに数十億円で売却し、その一部を自分が設立した香港の関連会社の口座経由でスイスの2つの銀行に送金し運用していたようです。

贈与税といえば、武富士の創業者の長男の贈与税をめぐる課税処分取消訴訟は、最高裁で2011年1月21日に口頭弁論が開かれ、2011年2月18日、長男が逆転勝訴してしまいました。
この裁判の争点は、長男の住所地が日本なのか、香港なのかでした。一審は、長男の勝ち、二審が国側の勝ちでした。長男は、武富士の香港子会社の役員を務めて、香港と日本を行き来しており、両方に住居がありましたが、長男が香港に赴任していた3年半のうち、約3分の2は香港に滞在し、現地で仕事もしていたことから生活の本拠地が日本とはいえないと最高裁は判示したのです。裁判長は、「著しい不公平感を免れない。長男側の行為は税回避目的だったが、租税法律主義による以上、やむを得ない」旨補足意見を述べたとのことです。
長男は、追徴課税された約1650億円をすぐに支払い、長い裁判を続けてきたので、国税局から返還されるのは、還付加算金がついて約2000億円になるというのです。贈与したものは、武富士株約1569万株を有するオランダ法人の株式の90%で、実質的には武富士の株式です。その評価が1330億。
税を逃れるため計画的に、長男にこれほどのものを贈与できるほど武富士の創業者は、高金利で貸し、厳しい取立てをすることによって、儲けてきたのです。

武富士は、2010年10月31日、更生手続開始決定がなされ、おそらく弁済は債権額のわずかになると思われます。過払い金返還請求権を有する債権者らは、「どうにかならないのか。」とヤキモキしています。

長男は、武富士の役員をはずれた後も大株主として隠然と取締役らに力をふるい、高額の株主配当を受け取っていたことはなかったのでしょうか。  武富士の更生管財人は、同社の更生手続申立代理人である小畑英一弁護士が選任されたため、過払債権者の立場にたって、管財業務をやってくれることは期待できないのではないか?と思われます。過払債権者が、直接、不法行為責任を問うしかないと思われますが、険しい道のりです。  なお、2000年の税制改正で、贈与する側か受ける側のいずれかが過去5年以内に日本に住んでいれば、海外資産も課税対象となりました。しかし、税法改正は、後手になることが多く、金持ちは今後もグローバルに税回避策をあみ出すことでしょう。  また、武富士の更生管財人は、国税局に対して、法人税を払いすぎてきたと主張して、還付請求の手続を始めているとのことで、一般国民としては、やりきれない思いが募ります。他のサラ金業者も同様のことをやると、財源がますます減少してしまうことになってしまいます。

 

ぜひ、相続に強い名古屋市(愛知・岐阜・三重)の北村法律事務所 弁護士北村明美(052-541-8111)へご連絡下さい。