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コラム

Yearly Archives: 2011

弁護士橋下徹氏、大阪ダブル選圧勝によせて

2011年11月28日 カテゴリー:民事

この原稿を書いているのは、2011年11月28日。昨日の大阪市長と大阪府知事のダブル選挙で橋下氏が圧勝したニュースが、一般紙のトップ記事であった。
橋下氏の圧勝は、予想されたことであった。週刊文春と週刊新潮の橋下氏タタキは、「父親の出自(でどころ・生まれ)は関係ない」という橋下氏の反論と大阪在住の方々の同情により逆効果となったと思われる。

「大阪都構想」というものは極めて漠然としており、大阪市と大阪府の垣根を取り払いさえすれば夢がひらけるということは、想像することができない。それよりも、大阪市の職員や教育委員会を敵とすることによって、敵味方をはっきりと作り出し、自分を応援してくれるよう働きかけるという橋下流の手法なのだろうかと思ってしまう。当選後の記者会見で、橋下氏は、職員の給与を見直す、幹部職員が政治に口を出す体質を変える、平松氏を応援した市職員は市役所を去ってほしい等と述べていた。今後、職員や学校の先生は大変なことであろう。    なお、公務員に対しては、地方公務員法に違反したり、欠格事由に該当する行為をしない限り、懲戒処分を行えない。このことは、弁護士である橋下氏は重々承知のはずだ。

名古屋市では、職員の給料は下げられたが、教育に関する条例までは作られていない。名古屋市の職員は、トップが変わればその時々の市長のやり方を習得し、我慢強く職務を行なっておられるように見え、市長と敵対する程の人はいないと聞いている。

「選択」と呼んでいるものは、自分自身や自分の置かれた環境を自分の力で変える能力のことであり、選択するためにはまず自分の力で変えられるという認識を持たなくてはならない。(『選択の科学』シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳)

選挙は、選挙民が候補者を選択するというものであるが、自分自身の力で変えるわけではなく、選択した候補者に変えてもらおうとするものであるところに、純粋の選択ではない、ねじれがあるわけだ。
橋下氏は、「橋下氏の力で大阪が変えられる」という希望を、選挙民に持たせる力が強かった。現職の平松氏が行ってきた市政では何も変わらないと思った人が、チェンジを望んだ。そういう人の心を、がっちり掴んだのであろう。民主党に風が吹いた選挙のときも、それまでの長い自民党政治を変えたいと思った人が、こぞって民主党に票を入れた。しかし、民主党に投票した人の中には、今の民主党政権に期待を裏切られたと思っている人も多いのではないだろうか。

弁護士が国会議員や地方公共団体の首長になっていることが多い。
ある議員の方からは、「弁護士をやっていて、法律の解釈だけでは限界があると感じた。立法に携わらないと、世の中を変えることはできないと思い、議員になった。」と聞き、なるほどと思った。また、公務員が立候補するためには、職を辞めなければいけないのに比べ、自営業である弁護士の場合、立候補しても弁護士を辞めなくてもいいし、仮に落選しても弁護士を続けられるので、立候補し易いということも聞いた。最近の若い人の中には、本当は政治家を目指しているが、政治家になるには弁護士になっておいたほうが有利になったり箔がつくから、とりあえず弁護士になったという人がいるということも聞いた。団体によっては、弁護士を特別に優遇し、議員の道を用意してくれるところもあるという。

弁護士は、司法試験合格者数が増え、ほとんどが弁護士になってしまうので、過剰時代になってしまった。議員や首長は、立法に携わることができ、国や地方公共団体を動かすことが出来るので、若い弁護士の方達には、第2・第3の仙谷氏、枝野氏、福島氏…になって欲しいと思います。

石原東京都知事も応援に駆けつけた橋下氏が、今後どのようなことを行なっていかれるのか、目が離せません。「ハシズム」が「ファシズム」にならないよう願い、目を離してはいけないとも思っています。

島田紳助氏と街宣車、暴力団排除条例

2011年09月30日 カテゴリー:民事

島田紳助氏が、暴力団との交際を原因として、芸能界を引退するという記者会見を開いてから、だいぶ経った。紳助氏が暴力団と関係をもったきっかけは、番組で発言したことについて、右翼団体が街宣車でテレビ局の周りを廻るなどしたことから逃れるためであったという。

ビートたけし氏は、9月29日号の週間誌で、
「(自分も)右翼団体から街宣活動をかけられたことがあったけど、オイラは紳助と違う。ヤクザに仲介なんて頼んだことない。一人で住吉連合会の堀さんのところに行って土下座して謝ったの。その後、右翼の幹部にも会ってそれで終わりだよ」と述べている。
なかなか、たけし氏のようにやれるものではない。

なぜ紳助氏もたけし氏も、弁護士に頼んでくれないのだろうか。

弁護士ならば、街宣車は、不特定多数に聞こえるほど大きなスピーカーで繰り返し叫び続けるため、それらをビデオやボイスレコーダーで証拠化して、名誉毀損罪や業務妨害罪で告訴するなどして、警察権力に動いてもらうだろう。弁護士が、街宣活動により業務を妨害されてしまうケースは、1つや2つではないと聞いている。自分の事務所に街宣活動をかけられた弁護士は、測定器で騒音量を測るなどして、右翼団体が事務所の周りを街宣活動しないよう仮処分決定を得て闘った人もいる(民事的解決)。
また、「悪徳弁護士○○は、交通事故の被害者をいじめている…」等と街宣車でやられたが、無視して、その右翼が関わっている交通事故事件を早急に解決したら、街宣活動はパタっと止まったという経験をした弁護士もいる。

かって、元総理大臣を「ほめ殺し」した右翼団体がいたが、それとても褒めて殺すので、内容を聞けば名誉毀損罪にあたると立証できると思われる。弁護士であるから、あくまでも正攻法でいくしかない。

もっとも、弁護士は権力をもっていないので、早い解決をするには警察に動いてもらうのが1番だというつらさはある。民事不介入の警察に動いてもらうには刑事事件だということをわかってもらうことである。

ところで、不思議なのは、右翼団体の街宣活動を押さえるために、なぜヤクザに頼むことが効果的かである。種類が違う団体のように思えるが、どうしてだろう。裏で手を結んでいるものなのでしょうか。

名古屋市では、市道に放置される自動車をどうするか頭を痛めているが、数年前には街宣車が放置されていたこともあった。街宣車は、黒色の塗装などをして右翼団体名を書き、大きなスピーカーで軍歌を鳴らしていく車である。名古屋の裁判所や愛知県警本部のすぐ向かいに護国神社があるため、定期的に街宣車が何台も集結し、裁判所や警察付近を走り、騒音としか思われないような大きな音で軍歌やスローガンを叫びながら、政党の県連本部などを廻っていくのである。中を見ることはなかなかできないが、乗員は1名かせいぜい数名と思われる。おそろしげな車に見えるが、バスなどの車を改造した車である。

東京都や大阪府、愛知県など各都道府県では、4月1日から10月1日にかけて、暴力団排除条例が施行された。 昨年あたりから、これまで交わしていた事業者間の契約書に次のような条項が入ることが増えた。

「反社会勢力との取引拒絶
1 甲及び甲の親会社・子会社等の関係会社並びにそれらの役員、従業員等が、以下の反社会勢力のいずれにも該当しないこと、かつ将来にわたっても該当しないことを確約します。
2 甲が前項の規定に違反していることが判明した場合、乙は直ちに契約解除できるものとし…。  反社会勢力とは、暴力団・暴力団員・暴力団準構成員、暴力団関係企業・総会屋等・社会運動等標榜ゴロ・特殊知能暴力集団等をいう。」

そして、知り合いの元警察官が企業の顧問として再就職されるようになった。
警察官の天下り先がすごく広がったと思われる。

たけし氏は、「本当に助かる。これからは条例を盾に暴力団との交際を断れるからありがたい」と述べている。

法律的に見ると、ある集団に属している人々をその集団に属しているからという理由のみで社会的に排除し、罰則まで課すという法理はこわいなという疑問は残るけれど…

東日本大震災と濫用的会社分割

2011年05月16日 カテゴリー:企業問題

2011年3月11日の長く大きな横揺れによって、息を呑む大きな被害が発生し、心の時間が止まってしまったようだった。ふと気がつくと、名古屋の裁判所はケヤキやユリの木の新緑に溢れ、名古屋特有の蒸し暑い夏の始まりを告げていた。

福島原発の放射能に覆われた地域では、家や工場や田畑や牧場は残っていても、何十年(何百年?)も使用できない。放射性物質の含まれた水を今でも海に際限もなく漏出させているため、漁業にもこの先どのくらいの期間、影響を与えるのだろうか。

被災者の中には、今後家を建てるにしても、従前の家のローンと併せて二重のローンに苦しむ人は多いと思われる。壊れた船のローンと新しく作らなければならない船の二重ローンや、農業機械や事業用設備・機械の二重ローンを抱えていく人も多いだろう。

良い財産だけを新しい会社に移し、債務を古い会社に残して、古い会社だけを整理することができたら、どんなに楽だろう。そんなことができるのなら、被災者の方々はいくらでも法人をつくり、法人格を利用して、少なくともゼロあるいはプラスからの出発とするだろう。

しかし、そんなことをすれば古い会社の債権者を害することは明らかだ。だから、政策的に救済されない限り、苦しくても二重ローンを抱えて頑張っていかざるを得ない。

一方で、被災していないにもかかわらず、会社分割を濫用して優良財産だけを新設会社に移し、債務を古い元の会社に残して、新設会社で今までと同じ事業を行い続ける会社がある。

東京や福岡ではいくつも報告されている。愛知県でも、優良資産だけではなく、従業員の全てと取締役の全ても新設会社に移し、元の会社は特別清算開始の申立をする会社がある。

このようなやり方は、会社分割の濫用ではないかということで、今、耳目を集めている。

平成22年5月27日 東京地裁は、

(1)株式会社の新設分割が詐害行為取消権の対象となることを認め、

(2)新設分割株式会社が新設分割の対価として新設分割設立株式会社の全株式を取得したとしても当該新設分割が新設分割株式会社の債権者を害するものと認め、

(3)詐害行為となる新設分割の目的資産が可分であり、当該新設分割を詐害行為として取り消し得る範囲は債権者の被保全債権の額が限度となるものの、その原状回復の方法としては逸出した資産の現物返還に代えて価格賠償を請求することができるとした。

新設分割設立会社は、控訴したが、平成22年10月27日、東京高裁は控訴を棄却した。

福岡地裁は、法人格否認の法理を使って、債権者を救った。

このような濫用的会社分割に、弁護士が加担していることは残念なことだ。

小泉・竹中時代の商法の改定によって何でもできることになってしまったが、健全な経済のために、今一度、会社法の改正が必要だと思われる。

 

相続税と贈与税

2011年02月10日 カテゴリー:遺産相続

~弁護士北村明美(名古屋)の相続コラム~

 

名古屋は、今、税金に関する関心が高い。市民税を10%下げるために名古屋市議会のリコールを成立させ、圧勝して、再度、市長になり、自民党を離党した大村愛知県知事を誕生させた河村旋風が吹き荒れているからです(議員報酬に関する関心はもっと高いようですが…)。
民主党が舵を取る日本国は、法人税を引き下げることとし、ただでさえ財源がないので、相続税をあげることにしました。すでに、小規模宅地等の特例を受けることができる要件が厳しくなり、持ち家があったり、同居していない親族には、減額なしとなるなど相続税は上げられてしまっています。

さらに、基礎控除額を4割減らし、死亡保険金の非課税枠を縮小し、最高税率を引き上げるなど相続での税収入の増加を財源に当て込んでいると思われます。それでも足りなくて、消費税をやがては上げようとしています。一方で、景気対策として、贈与税を下げて、お金を持っている高齢者が子供や孫に生前贈与することにより、子供らがお金を使って経済を活性化してくれることも狙っています(親から20歳以上の子・孫に対する贈与税の税率構造の緩和や相続時精算課税制度の対象範囲を20歳以上の孫にも拡大)。

税法は、財源を確保したい財務省といい顔をしたい政治家のせめぎ合いによって、変更されたり、選挙が終わったら、増税されたりする不安定なものだと思います。また、何かを下げれば、何かを上げるというアメとムチによって、財源を確保してきました。相続税の値上げは、基礎控除額が、減ることによって、富裕層ではない人達にも相続税がかかってくる恐れがあるというので、関心が高いのです。

相続税や贈与税は、課税しやすい税であるといわれています。もともと相続税や贈与税は富の過度の集中や固定化を抑えるために導入されたものだからです。金持ちの富がそのまま代々受け継がれると、社会的・経済的地位も固定化されてしまうからです。

税務署の調査官は、相続税の調査をする際、初回から被相続人の預金口座の履歴やそれに関係すると思われる相続人の預金口座の履歴をもってきました。相続人が協力しないから履歴をとったわけではなかったので、驚きました。上手な調査官は、仏壇にまずお参りをして、相続人の心に入り込み、被相続人の趣味や財テク法を聞いて、財産を探っていきました。

最近、弁護士の脱税事件も大きく取り上げられています。ピエールカルダンの日本国内代理店を創業した社長は、弁護士でした。生前、スイス銀行で金融資産約25億円を運用していましたが、遺族がそれを隠して約11億円を脱税したとして、東京国税局が相続税法違反として横浜地検に告発しました(2011年1月18日夕刊)。その社長は、8年ほど裁判官をした後、弁護士に転じたとのことですが、商才に長けており、ブランドの商標権を大手メーカーに数十億円で売却し、その一部を自分が設立した香港の関連会社の口座経由でスイスの2つの銀行に送金し運用していたようです。

贈与税といえば、武富士の創業者の長男の贈与税をめぐる課税処分取消訴訟は、最高裁で2011年1月21日に口頭弁論が開かれ、2011年2月18日、長男が逆転勝訴してしまいました。
この裁判の争点は、長男の住所地が日本なのか、香港なのかでした。一審は、長男の勝ち、二審が国側の勝ちでした。長男は、武富士の香港子会社の役員を務めて、香港と日本を行き来しており、両方に住居がありましたが、長男が香港に赴任していた3年半のうち、約3分の2は香港に滞在し、現地で仕事もしていたことから生活の本拠地が日本とはいえないと最高裁は判示したのです。裁判長は、「著しい不公平感を免れない。長男側の行為は税回避目的だったが、租税法律主義による以上、やむを得ない」旨補足意見を述べたとのことです。
長男は、追徴課税された約1650億円をすぐに支払い、長い裁判を続けてきたので、国税局から返還されるのは、還付加算金がついて約2000億円になるというのです。贈与したものは、武富士株約1569万株を有するオランダ法人の株式の90%で、実質的には武富士の株式です。その評価が1330億。
税を逃れるため計画的に、長男にこれほどのものを贈与できるほど武富士の創業者は、高金利で貸し、厳しい取立てをすることによって、儲けてきたのです。

武富士は、2010年10月31日、更生手続開始決定がなされ、おそらく弁済は債権額のわずかになると思われます。過払い金返還請求権を有する債権者らは、「どうにかならないのか。」とヤキモキしています。

長男は、武富士の役員をはずれた後も大株主として隠然と取締役らに力をふるい、高額の株主配当を受け取っていたことはなかったのでしょうか。  武富士の更生管財人は、同社の更生手続申立代理人である小畑英一弁護士が選任されたため、過払債権者の立場にたって、管財業務をやってくれることは期待できないのではないか?と思われます。過払債権者が、直接、不法行為責任を問うしかないと思われますが、険しい道のりです。  なお、2000年の税制改正で、贈与する側か受ける側のいずれかが過去5年以内に日本に住んでいれば、海外資産も課税対象となりました。しかし、税法改正は、後手になることが多く、金持ちは今後もグローバルに税回避策をあみ出すことでしょう。  また、武富士の更生管財人は、国税局に対して、法人税を払いすぎてきたと主張して、還付請求の手続を始めているとのことで、一般国民としては、やりきれない思いが募ります。他のサラ金業者も同様のことをやると、財源がますます減少してしまうことになってしまいます。

 

ぜひ、相続に強い名古屋市(愛知・岐阜・三重)の北村法律事務所 弁護士北村明美(052-541-8111)へご連絡下さい。