名古屋の弁護士事務所 北村法律事務所

名古屋で弁護士に相談するなら北村法律事務所へ。B型肝炎訴訟、相続、交通事故、離婚など、お気軽にご相談下さい。

遺言について

遺言とは

遺言とは、自分が生涯をかけて築き、守ってきた財産を、有効、有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思を書き留めておくものです。
遺言者の意思を書き留めるというだけでなく、遺言をしておくことによって、相続人間での不毛な骨肉の争い(いわゆる遺産争い)を予防できる唯一の方法が遺言です。
自分の意思を反映し、遺産分割をして欲しい場合には遺言書を作成することをおすすめします。

遺言の種類

遺言には、大きく分けて【普通方式遺言】と【特別方式遺言】の2つの種類の遺言があります。一般的に行なわれているのは、普通方式の遺言です。

普通方式遺言

通常の日常生活の中で遺言をしようとする場合には、「普通方式遺言」の方式で作成することが必要です。そして、普通方式遺言には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。

特別方式遺言

普通方式遺言をすることができないような特殊な状況下にある時には、「特別方式遺言」の方式で作成することができます。これは、「普通方式遺言」の要件を若干緩和した方式となっています。

遺言にはいろいろな種類がありますが中でも、一番よく使われる普通方式遺言の「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」と、特別方式遺言の「危急時遺言」についてご説明します。

自筆証書遺言について

自筆証書遺言とは、文字通り自分で作る遺言です。
証人もいりませんので、作りたい時に作れます。

メリット

1
自分で作成するため、内容が第三者に知られることがない。
2
公証人の費用がかからない。
3
作成が非常に簡単。

デメリット

1
ご自身で作られるので、形式に不備があり、遺言書自体が無効になる可能性が高くなる。
2
偽造、変造、紛失、未発見の恐れがある。
3
無効になりやすい。

自筆証書遺言は、まず争われやすいという欠点があります。
例えば、病気をした後などしっかりと認識できる文字が書けない、そういった字で書かれた遺言が出てきた場合、あまりもらえない兄弟が、「これは偽造である」と言って騒いだり、これは本当にお母さんの字かどうかわからない。などと争ってくる場合が多々あります。
また、たくさん遺産をもらえる人間が勝手に作ったに違いない、などと紛糾することがあるのです。

また、自筆証書遺言の場合、無効になってしまうことも多くあります。
例えば、亡くなったお父さんがさぞ心を込めて書いただろうなと思われるような内容が便せんなどに4枚も5枚もと長々と書いてあって、全て読んでいっても、誰々がどうした、あれはいいやつだった、ケンカをするな、と書いてあるだけで、誰に何を相続させるのか、という肝心の財産分けについては一言も記載が無い、ということがあるのです。
遺言として一番大事な部分が欠けているわけです。

自分で遺言を作成する場合は、一度弁護士にこれで正式な遺言として認められるのかなど相談することをおすすめします。

また、遺言は書いた人が亡くなってから見るものです。生前であれば、これはどういう意味か、どういう意味で書いたのか、などと聞けるのですが、亡くなった人には聞けません。

さらに、自筆証書遺言は紛失しやすい、という欠点があります。
「遺言を作っておいたから」と生前に聞いてはいたが、心臓発作で急死してしまいました。その後、会社の金庫、自宅の書類入れ、額の裏、本の間などすべて探しましたが、いっこうに遺言が出てきません。そのため、相続人は誰が隠したんだ、誰かが破ったに違いない、と約半年間いがみ合いが起こったケースもありました。

必ず見つけてもらう、紛失しないための方法として、よく弁護士に預けるのもひとつの方法ですが、たくさん財産を相続させる、と書いた人に預けておくのもいいと思います。たくさんもらえる人は決してその遺言をなくしません。そのかわり、相続をさせない相手や法定相続分より少めな相続人には、遺言を作成したことを黙っておくほうが良い場合もあります。

なお、自筆証書遺言は、被相続人が死亡した後、家庭裁判所に検認の申立をしなければなりません。

公正証書遺言について

公正証書遺言は公証人に作ってもらうもので、証人が二人必要です。

メリット

1
公証人が関与しているため、遺言が無効となる可能性が少ない。
2
保管が確実である。正本と謄本を紛失した場合でも、再発行が可能。
3
相続開始後、家庭裁判所による検認が不要。公正証書遺言があれば、預金を下ろしたり、不動産登記をしたりなど、それだけで手続きが進められる。

デメリット

1
費用がかかる
2
手間がかかる

公正証書遺言は、公証人という法律専門家と、証人が二人も立ち会いますから、なかなか争われにくいということです。
また、公証人役場では通常120歳まで遺言を保存してくれますし、「きんさん、ぎんさん」のように、もっと長生きするなら、その旨を公証人役場に申し出れば、もっと長く保存してくれます。さらに最近では全国どこの公証人役場で作っても、東京のデータベースに入り、コンピュータで検索できるようになっています。したがって公正証書遺言がなくなるということはありませんが、公証人役場でもらった公正証書遺言の謄本も一番多く遺産がもらえる相続人に預けておくと確実です。検認の手続も不要です。

公正証書遺言の作成には証人が2人必要です。
配偶者、あるいは息子やその妻は証人にはなれません。
なぜなら、公証人役場についてきて、有利な遺言を書かないと面倒をみません、という無言のプレッシャーをかけることがあるからです。さりとて近所の人に証人を頼むというわけにもいきません。そこで弁護士など専門家に証人を依頼される場合がほとんどです。

また、公証人に費用を支払わなくてはいけないので自筆証書遺言より費用がかかりますが、それほど高くないものですから相続争いが起きそうだ、うるさい相続人がいる、などという時は公正証書遺言をおすすめします。

なお、公証人は動けない人のために病院や自宅へも出張してくれます。

危急時遺言(ききゅうじいごん)について

危急時遺言は、事情により普通方式遺言が不可能な場合の遺言方式です。

自筆証書遺言や公正証書遺言は、ある程度元気な場合しか使えません。
入院していてもう余命いくばくもないかもしれない、字も書けない、などという場合は危急時遺言を作成することがあります。
この場合は証人が3人必要で、証人のうちの1人が代筆して作成します。
ただし、危急時遺言は遺言能力がないことで後で争われることが多いです。
たとえば、脳溢血や脳梗塞で倒れた人の場合、遺言する能力があったかどうかが問題になります。
そのような争いを防ぐためにも、証人の中にはぜひお医者さんを入れることが必要です。そして、遺言を作成した時点で、誰に何を相続させるかを判断する能力、つまり遺言能力があるということを記載した診断書をとっておくと一番よいでしょう。
ただ最近のお医者さんは、こういう争いに巻き込まれたくないと思われる方が多く、証人になってもらうことに苦労することも多々あります。

当事務所弁護士も、病院に入院したきりになった方の危急時遺言を作成したいという相談を受けたことが何度かあります。
そういった依頼をお引き受けした際は、まず病院に行って入院している方と会い、本当に遺言をする意思があるか、どのような遺言を書こうとしているのかということを確認します。

危急時遺言は成功しないことも多いものです。
遺言は、ぜひ元気なうちに作成されることをおすすめします。

危急時遺言は遺言の日から20日以内に家庭裁判所に請求して、その確認を得なければ効力がありません。
また、遺言者が普通方式による遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存すると、当然に効力がなくなります。
危急時遺言はあくまで例外的なものと考えられているのです。

弁護士北村明美お気軽にお問い合わせ下さいTEL:052-541-8111

遺言書作成・死因贈与契約書作成

遺言書は、高齢な父母の武器になります。

遺言書は、高齢な父母の武器になります。

生前に財産を贈与してしまうと、財産が少なくなって、不安です。遺言書は、自分が亡くなった時に残っている財産を誰々にあげるというものなので、生きている間は自分の財産を自由に使うことができます。
一方、遺言で多くの財産を相続させてもらえる相続人は、遺言者である父上や母上の介護を一生懸命しよう、と思うでしょう。
モチベーションを上げてあげることができる、ということです。
つまり良い遺言を作れば、あげる人も、もらう人も円満な関係を作ることができるのです。

死因贈与契約書

遺言書と同じような効力を持つのが、死因贈与契約書です。少し性格が違います。
遺言の代わりに死因贈与契約書を作る場合もあります。

次のような方は、ぜひ遺言書を作成してください。

1
子どもらの仲が悪く、死後相続争いが起きると予想される場合
2
子どものいない方で、夫も妻もお互いに遺言を作り合いましょう。
3
子どもがいない方で、配偶者もいない方
4
自分が経営している事業を必ず引き継いでもらいたい人
5
自分が先祖から受け継いだ農業を必ず引き継いでもらいたい人
6
老後の世話をしてくれる人にたくさん遺産をあげたい人
7
愛人との間に子どもがいる夫がいる妻

法律知識

精神条項

民法で定めていなくても、最近ではお葬式をするのかどうか、するにしてもどのようにしてもらいたいか、あるいは自分が死んだ後、子どもたちにどうしていってほしいのか、といった精神的なことを書いた遺言も出てきました。
法律的には効力がなくても、遺言に書いておけば遺言者の意思を尊重してくれるはずです。

「相続させる」と「遺贈する」

遺言の中で一番大切なのは、誰に何を相続させるのか、遺贈するのか、という部分です。
法定相続人には「相続させる」、法定相続人以外にあげるときは「遺贈する」と書いてください。
「相続させる」と書いておいたほうが、相続を原因として不動産の所有権移転登記をする場合、登録免許税などが安くなります。

不動産

誰に何をあげるかで注意してもらいたいものは、不動産です。
不動産は預金などと違って何分の一ずつ、などというように分けることが難しいものです。
自分の子どもたちは仲がいいから、3分の1ずつ分けよ、と書いておけば上手に分けるだろう、というのは間違いのもとです。
何筆も土地があるなら、誰にどの土地を、というように親の威厳で指定しておいたほうがいいでしょう。
一筆の土地を仲良く等分に分けろといっても、土地の評価は難しいものです。
兄弟3人で同じ広さずつ分けたとしても、どこを取るかで争わないとも限りません。
一筆しかない場合は図面でもつけて、具体的に指定しておくくらいの配慮が必要ですし、あるいは売却して売却代金をこのように分けなさいと書いておいてほしいものです。

祖先の祭祀の主宰者

相続財産とはみなされていないものに仏壇や墓がありますが、祖先の祭祀を誰が主宰していくかを指定していくケースも多く見られます。
地方では法事にお金がかかり過ぎて、残った子どもが押しつけ合っていることもありますし、都会では墓地などが高価なため、取り合うということがないわけでもありません。
もし、墓などを守りたい、法事も続けていってほしいと思う場合には、誰かを指定しておくほうが争いがないでしょう。
また、お骨を墓に納めず、散骨したい場合も、遺言者の思いをよく理解してくれる人を祖先の祭祀の主宰者に指定しておくとよいでしょう。

遺言執行者

遺言というのは作成した人が亡くなった後に見るものです。
もしも、声の大きな人がいて、こんな遺言なんか反古にしろ、自分にはこれとこれをよこせ、こういうふうに分けたほうがいい、などと言い出し、遺言を無視して違う遺産分割協議書に皆の判を押させると、それが通ってしまいます。
せっかく作った遺言どおりにしてもらいたい場合は、遺言執行者というものをつけておきます。
遺言執行者とは遺言どおり執行する人です。
遺言どおり、不動産について所有権移転登記をしたり預貯金を銀行からおろして分けたりする役割を果たします。

推定相続人の廃除

親不孝な子どもがいて、その子には遺留分さえやりたくない、という熾烈なケースがないわけでもありません。
そういう場合は、推定相続人から廃除しておく遺言を書くこともできます。
私が実際にかかわったケースでは、道楽者で浪費家という息子がいて、いつも脅しては父親からお金を巻き上げていました。
もちろん、父親がなかなか首をたてにふらないと、暴力をふるったり刀を振り回したりもしたのです。
そこで、父親は遺言を作成し、その息子を推定相続人から廃除しました。
父親が亡くなった後、遺言執行者は家庭裁判所に遺言に基づく相続人廃除の審判を申し立てます。
廃除の審判が確定すると、その道楽息子は遺留分減殺請求権すら被相続人死亡時にさかのぼって失います。
なお、その道楽息子に子どもがあれば、代襲相続が問題となります。

相続欠格事由

遺言を脅迫して書かせたり偽造したりした場合は、相続欠格事由になり、やはり遺留分ももらえなくなります。
また、せっかく発見した遺言書を隠したり、破ったりしても相続欠格事由となります。
ちなみに、サスペンスものでよく出てくる、被相続人を殺したり他の相続人を殺したりした相続人も、同じく相続欠格事由に該当してしまいます。
もちろん、あなたはそんなことはしないですよね。

遺言を作成してもらうには感謝の気持ちを持つことです。遺言は自分のためではなく、後に残っていく人のために書くからです。
それに対する感謝の気持ちをもって頼めば、快く書いてくださるのではないでしょうか。



pagetop