名古屋の弁護士事務所 北村法律事務所

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事例紹介2

信じていた夫に愛人と子どもがいたなんて…

渡辺春江さん(53歳)の場合です。
夫に愛人ばかりか子どもまでいました。愛人は夫に認知を迫り、養育費を請求してきます。いったんは離婚も考えてみましたが…。

夫の不貞行為

夫の慎太郎は、規模は小さいけれど食品メーカーの二代目社長で、経済的にも恵まれていました。
3人の子どものうち2人は大学生、末の息子は高2で受験準備の真っ最中。

5月のあの日は、いいお天気でした。
夫は朝からゴルフです。
午後3時20分、ピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴り、夫の会社で働く事務員みどりとその両親が訪ねて来ました。
以前、みどりの妹のことで相談を受け、忙しい夫に代わって私が世話をしてあげたことがあったので、またそのことかと思い、応接室に入ってもらったのです。

ところが・……。青天の霹靂とはこんなことをいうのでしょうか。
「お宅のご主人がうちの娘に手をつけて子どもを産ませた。それを知った娘の夫は離婚を迫ってきていて、これからどうしていいのかわからない。お宅のご主人が悪いのだから、子どもを引き取ってもらいたい」

私の頭の中は真っ白になってしまいました。
しばらくたってからようやく夫が行っているゴルフ場に電話をして、夫にすぐ帰ってきてくれるよう頼んだのですが、大事な接待だから帰れないと言うだけでした。

その後も夫の対応は逃げ腰で、みどりやその両親が押しかけて来ても私に任せようとするのです。あまりの無責任さ、私に対する嘘の数々で、私も真剣に離婚を考え始めました。
夜も眠れず、病院で精神安定剤をもらうようにもなりました。受験を控えている息子のために頑張らなければと思うのですが、今まで外で働いたこともなく、実家の両親ももう亡くなっています。

すったもんだしているうちに、みどりとその夫は家庭裁判所で離婚することになったということがわかりました。
みどりは慎太郎に対して子どもの認知をするように迫り、調停を起こしてきました。そして、養育費を1ヵ月当たり10万円支払えとも言うのです。
さらにみどりの元夫が、慎太郎に対して不貞行為をしたことなどに基づく慰謝料請求をしてきたのです。

法律事務所への依頼

こういうことになって、私はようやく北村法律事務所の門をくぐりました。
女性の弁護士さんだったので、離婚に踏み切りたいが迷っているという胸の内も打ち明けました。
弁護士の北村明美先生は、夫は今どう言っていますか。
離婚してその女性と結婚すると言っていますか。謝っていますか。」と聞いてくれました。
私は、
「主人は浮気したことを謝っています。
子供を作ってしまったことを後悔しています。
離婚したくないと言ってくれています。でも、私が毎日のおように追及していたら、居直って、もう離婚でもなんでもいいとふてくされてしまいます。」
と言うと、弁護士の北村明美先生は、夫の慎太郎に会って本心を聞いてあげると言ってくれました。

すると、夫は、 「本当は離婚したくない。やり直したい。妻と先生の言うとおりにするから、もう責め立てるのはやめてほしい」
というのが本心でした。

私に経済力がないこと、慎太郎が私に謝罪し何でも言うとおりにすると述べていること、慎太郎の財産の大部分は親から相続したもので、今離婚しても私が財産分与としてもらえるものは少ないことなどから、とりあえず、離婚せずやり直す方向でいくことにしました。
そのかわり、慎太郎には「二度と不貞行為はしない。万一、約束を破ったら…」という誓約書を書いてもらい、居住用財産2,000万円の贈与も受けました(結婚20年以上の夫婦間の居住用財産の贈与は贈与税がかからないため、これを利用しました)

さらに、弁護士の北村明美先生の勧めで遺言書も作成してもらったのです。
みどりと慎太郎の子どもが、慎太郎の死後、相続分を要求してくるに違いないからです。

ふり返ってみれば、ここ数年前から、私たち夫婦には会話らしいものがなく、仕事だゴルフだという夫に何も期待せず、子ども三人を育てることに人生をかけてきた私でした。
もう一度夫婦のきずなをとり戻す努力をしてみようと思います。

解説

不貞行為とは

夫または妻の貞操義務に反する行為をいいます。
法律上、「貞操義務」という文言は出てこないのですが、不貞行為が裁判上の離婚原因の一つになっていることなどから、夫婦は互いに貞操を守る義務があると解されています。このケースは、不貞行為をした男性慎太郎には妻があり、女性みどりには夫があるというケースでした。

慰謝料請求権

慎太郎は、みどりに夫があることを知っていたにもかかわらず、不貞行為を続け子どもAまでもうけました。
そのことが、みどり夫婦が破綻した大きな原因ですから、みどりの夫(元夫)は、慎太郎に対して慰謝料請求権が認められます。
もちろん不貞行為は一人でできるものではなく、慎太郎とみどりが共同で行なうものですから、みどりの夫は二人に対して連帯して○○円支払うよう請求することもできます。
同じように、慎太郎の妻は、慎太郎とみどりに対して慰謝料と請求することができることができるわけです。
ちなみに、不貞行為というのは単なるプラトニックな関係ではないと考えられています。

以上のとおり、日本では不貞行為をした相手に対して慰謝料請求権が認められていますが、ヨーロッパなどの中には認めていない国もあります。
「恋愛は自由」であることを尊重しているわけです。

不貞行為を理由に離婚を請求したい、あとの生活資金として慰謝料も請求したいと思っていらっしゃる方は、不貞行為の「証拠」をきちんとつかんでください
夫が白状している、認めているという場合でも、いざ請求すると、夫は「そんなことは言った覚えがない。A子さんとは単に同じ職場で働く上司と部下という関係でしかない」とか、「何度か喫茶店には行ったがプラトニックな関係だ」などと主張してきます。
さらには、「確かに深い関係はあったが、彼女(彼)とは三年以上前に別れており、慰謝料請求権は時効で消滅している」と主張する人もいるのが、現実の裁判なのです。
また、愛人が若い場合は「妻があることは知らなかった。
男性(夫)が私と結婚しようと言ってだましたのだ」という弁明がなされることもあります。

なお、慰謝料請求権は、不貞行為があったことを知った時より三年で時効消滅してしまいますので要注意。

認知と相続権

法律上婚姻関係のない男女間に生まれた子どもに、父または母との間に親子関係を生じさせるため行なうのが「認知」です。
認知は「認知届」によって任意にすることもできますし、遺言ですることもできます。このケースのように父親である慎太郎が任意に認知をしてくれない場合、子どもは父親に対して認知請求の訴訟や審判を起こすことができます。父親が認知をしないまま死亡してしまった場合、子どもは、父の死亡の日から三年以内なら、検察官に対して認知請求の訴えを起こすことができます。
そして、母親が受胎した頃、父親と肉体関係があったことを証明し、鑑定によって親子であることの確率が高いと、認知請求の訴えが認められるのです。鑑定はDNA鑑定が一般的です。
認知されると、未成年の子どもは父親に対して扶養請求権が認められます。父親としては養育費を支払う義務が出てくるわけです。そして、もう一つ、遺産を相続する権利も認められるのです。

愛人とその子どもの相続分

愛人は遺言がない限り法定相続人でもありませんし、相続分もありません。
夫と愛人の間の子Aは、任意に認知されたり遺言で認知されたり、認知請求訴訟で勝てば、法定相続人と認められます。法定相続分は、妻が2分の1、子A~Dで2分の1です。子Aと子B・C・Dの法定相続分について、民法は、もともと、非嫡出子は嫡出子の半分と規定していました。しかし、最高裁判例、それに続く民法改正によって、平等になっています。愛人の子どもと正妻側は相続で熾烈に争うことが多いのです。夫の死後の相続争いを避けるため、妻は夫に遺言を作成してもらったわけですね。



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