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コラム

C型肝炎訴訟 カルテのないC型肝炎患者の闘い(9)

2014年04月09日 カテゴリー:C型肝炎給付金請求訴訟

C型肝炎訴訟 出産とフィブリノゲン製剤

原告になったり、相談に来られたC型肝炎の患者さん達の7~8割は、女性だった。
出産か婦人科の手術(子宮摘出など)の時にフィブリノゲン製剤を投与されたに違いないと口々に述べた。
出産は、病気ではないから健康保険の対象にもなっていないというものの、出血多量で命を落とすことがある。また、妊婦は、DIC(播種性血管内凝固-血液がサラサラになって出血が止まらなくなる)になりやすい。 (「産科が危ない 医療崩壊の現場から」吉村泰典著 角川書店 )
医学が進歩した今日でも、平成25年12月28日の朝日新聞に記載してあるとおり、「妊婦の命に関わる出血に対し、産科医療機関の4割が輸血用の血液がないなどの理由で対応できないと考えている。こんな結果が厚生労働省研究班の調査で分かった。重大な出血は妊婦の死因で最も多く、いち早い輸血が重要」なのだ。
このように、妊婦の出血にどう対処するかが、昔も今も、産婦人科医が頭を悩ませるところであり、また腕をふるうところでもある。

そういう状況下で、学会の権威達が、止血剤としてフィブリノゲン製剤の使用を推奨し、ミドリ十字が強く勧めたため、昭和39年からフィブリノゲン製剤の使用が広がっていった。 フィブリノゲン製剤が認可されている時期、異常出血といわれるのは、500ml以上の出血のことであった。しかも、現場では、いちいち測量していては、間に合わないので、産婦人科医の経験と勘で、フィブリノゲン製剤を投与した。(産婦人科重要用語辞典) 出血量1000ml以上でないとショック状態は起きないと記載されているものもあるが、産婦人科の現場では、ショック状態を起こす前に止血の処置をして、重篤な結果にならないようにしようというのが医師のスタンスであった。
薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書P.17~P.18には次のように書かれている。

「医療現場でもっとも積極的にフィブリノゲン製剤を使用し、かつその有用性を論じたのは当時の産婦人科医たちである。産科領域の出血治療の変遷について、実地医家向けの『今日の治療指針』を年度別に見てみると、1966(S41)年 からフィブリノゲン製剤の使用が推奨され、1990(H2) 年まで続き、慎重投与としての肝炎の危険性についての記載は皆無に等しい。1989(H1)年の産科研修医向けの教科書にも、“慎重に”、と記載があるものの使用は認められている。2004(H16)年から2005(H17)年にかけての裁判の陳述書からは当時の産婦人科医は、現在でもフィブリノゲン製剤の有効性は肝炎ウイルス感染の危険性を上回るものであるとして、使用の正当性を述べている。そこには学会の権威者達によるフィブリノゲン製剤の使用推奨が、エビデンスに基づく科学的検証を妨げていたことがうかがえる。」

原告Hさんは、昭和53年11月29日、名古屋第一赤十字病院において、長男を出産した。 平成20年に、名古屋第一赤十字病院に行って、カルテが残っていないか、フィブリノゲン製剤が使われていないか聞きに行った。すると、平成20年1月31日付の「輸血とあわせてフィブリノゲン製剤を使用した可能性は否定できないと判断します。」という病院の印のある書面と助産録と分娩台帳(1行のもの)が送られてきた。また、原告Hさんの出産を担当したS医師は、すでに亡くなっていることも聞いた。原告Hさんは、その書面を(カルテのある)弁護団に見せたが、カルテがないからと断られてしまった。そこで、今回、カルテがないC型肝炎訴訟弁護団に依頼したのである。弁護士北村からお願いしたところ、今の産婦人科部長のF医師及び名古屋第一赤十字病院から、もっとよい書類をもらうことができた。次回に報告させていただきたい。これを突破口にして、多くの女性達を救うことを願っている。



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